元道の教育長で社会福祉法人北海道社会福祉事業団理事長の吉田洋一さんが古希を迎えるのをきっかけに国家資格の社会福祉士を目指して猛勉強中だ。受験資格を得るため専門学校に入学。約2年間の通信課程で単位を取り、その間に実習も経験する。合格率3割とされる難関試験に臨むのはそれから。吉田さんは、「何としても合格したい」と意気込んでいる。(写真は、吉田洋一さん)
吉田さんは、中大卒で道庁に入り、政策企画部門の中枢を歩いてきた。教育長時代には不合理な労使協定とされた北教組との4・6協定(昭和46年に道教委と北教組が締結した協定で、事前協議などが盛り込まれ、学校内で何をするにも組合側との協議を経た上で実施しなければならないという労使協定)を破棄に導くなど、行政の言わば構造改革に手を付けてきた。
教育長退任後は、北海道社会福祉事業団理事長に就任、今年で8年目を迎える。かつては道立の社会福祉施設などを受託運営する道の外郭団体だったが、吉田さんの前任だった鎌田昌市さん(元道教育長、現北翔大理事長)の時代に外郭団体から独立、自主運営組織に切り替わった。
官から民へ運営が切り替わったことで吉田さんの柔軟な発想が生きる。7年間で事業規模は年間30億円から45億円に、職員数もほぼ倍の840人に、事業所数も10ヵ所とこちらも倍になった。
そんな吉田さんは、今年で古希70歳を迎えることから、あらためて目標を立てて福祉の勉強をすることを決意、社会福祉士を目指すことにした。社会福祉士とは、専門的知識を持って身体的、精神的に障害がある人などの福祉に関する相談を受けて助言や指導、関係先との連携、調整を行う国家資格。
5月には、西野学園専門学校の通信課程に入学、40数年ぶりに学生証の交付を受け、理事長の傍ら2年間の学生生活を送ることになった。多忙な仕事の合間を縫って教材を読み、1回1200字のレポートを書く日々。実習は23日間、180時間が必要で、これは同事業団の運営している施設で行う予定になっている。
吉田さんは、「70歳になってチャレンジする人がいることが職員たちに伝われば良いかなと思う。私自身は、資格を取ることによって現場で働いている職員たちの気持ちや大変さなど同じ目線で考えられるのではないかと考えています」と話す。
持論は、『現状維持はダメ。守りに入るな、前に進め』。古希の挑戦は、それを裏付ける。受験資格を得た2年後、吉田さんは若者たちに交じって試験に臨む。