「切に生きる」野呂幸司氏が講演 冬山遭難で唯1人生還した後の苦悩の半生

社会・文化

 札幌市北区篠路地区に住む60歳以上を対象にした「篠路シルバー水曜大学」で商業施設建築設計のディール企画野呂幸司代表取締役(77)が2日、講演した。テーマは『切に生きる』で、道学芸大函館分校山岳部時代に遭遇した冬山遭難で1人だけ生還した後の人生や民間主導のまちづくりなどについて約60人を前に話した。IMG_7866(写真は、講演する野呂幸司氏)

「篠路シルバー水曜大学」は、篠路コミュニティネットワーク会議と篠路コミュニティセンターの共催で5月から9月までほぼ毎週水曜日の午前中に開講。様々なジャンルの講座を実施して地域で集い学び合い、出会いと生涯学習の場とすることを目的にしている。
 野呂氏の講演は同大学14回目の講座として行われたもので、最初に野呂氏がNHKラジオの「ラジオ深夜便」に登場した際の録音を約40分聴いた。
 
 野呂氏は、学生時代に冬の旭岳縦走で遭難、パーティ11人のうちリーダーだった野呂氏がただ1人生き残り、苦悩と責任を背負い続けて沈黙してきた50年の思いを話すとともに、自身も遭難時の凍傷で両足首から先を切断した身障者ながら世界の身障者スキー大会に出場した理由などについて語った。
 ラジオの中で野呂氏は「亡くなった10人も生きていると言われるくらい私が11人分を生きることに少しでも近づきたい一心だった」と振り返っていた。
 
 ラジオの録音を聴いた後、野呂氏は、半世紀近く沈黙してきた遭難について話すことを決めた理由として「親が子を殺害したり、子が親を殺害するなど命を粗末にするような社会に我慢が出来なかった。私の経験を話すことで少しでも命の大切さを分かって貰えれば」と述べた。
 
 また、野呂氏は、商業施設の建設を進める中で行政の壁をどう突破してきたかについて、「たとえ法律では不可能であっても、法律には但し書きというものがあって地域住民が望めば法律をクリアできることがある。街づくりは行政が行うのではなく民間が消費者、高齢者のために行っていくのが良い」と語った。
 
 最後に、野呂氏は「人生の主役は自分自身。脇役に甘んじてはいけない。毎日が挑戦で一歩でも二歩でも自分の判断で最後まで頑張ることが与えられた人生を切に生きることに繋がる」と強調していた。
 

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER