コープさっぽろ(本部・札幌市)とNPOソーシャルビジネス推進センターセンター、北翔大学の3者は18日、道内市町村で高齢者向け運動教室を介護予防事業として推進する連携協定を締結した。地域に住む高齢者の体力づくりをサポートして健康寿命を延ばすことに貢献、自治体の介護費用負担を減らすほか運動教室を指導する若者の地域雇用を実現する。介護予防のパッケージとして各自治体への導入を働きかけ、3年間で60市町村にこの運動教室を開設する予定。(写真は、お揃いの「まる元」トレーナーを着て連携協定に調印した3者。左からNPOソーシャルビジネス推進センター相内理事長、コープさっぽろ大見理事長、北翔大西村学長、同大増山生涯スポーツ学部長)
高齢化が進む地域の市町村では、介護保険適用になる前の介護予防が課題になっている。とりわけ2025年に団塊世代が後期高齢者になる頃には、介護保険の負担が増えて自治体財政をさらに圧迫させると言われている。このため、高齢者の健康を維持する介護予防事業が不可欠で、3者は2010年から始めている赤平市での運動教室で持続可能なソーシャルビジネスのモデルを確立できたとして今回、事業として本格的に進めるための連携協定を結んだ。
「地域まるごと元気アッププログラム」(通称・まる元)と名付けたこの介護予防パッケージは、体力別に1クラス25人と指導者が目の届く範囲で3クラスに分けて週に1回、60分間、市の施設などを借りて実施する。高齢者の体力度合いに応じて運動プログラムの内容を変えているため安全で安心な取り組みができるほか、一定期間ごとに体調をフォローアップ、運動が体力維持に役立っているかどうかも検証できる。
費用負担は個人が毎月1000円、自治体が1人当たり2000円の計3000円。運動教室を指導するのは、北翔大で「健康運動指導士」(厚労省所管の財団が認定・登録)を取得した卒業生が担う。健康運動指導士を取得しても地方には働き口が少なく札幌圏のスポーツジムや病院、診療所での就職が多かったが、この運動教室の展開で地方での定住雇用が可能になる。
コープさっぽろは、北翔大卒業生を年間5人程度採用し人件費を負担、運動教室が軌道に乗る2年目からはNPOソーシャルビジネス推進センターへの出向としてNPO法人が人件費を払う。コープさっぽろの大見英明理事長は、「地域の高齢者に元気に過ごしてもらうことでコープ店舗の継続利用が見込める。高齢者が生き生き過ごせるコミュニティづくりを赤平の実践で学んだが、今後はコープが孵化器の役割を果たして3者でこの取り組みを全道に広げていきたい」と語った。
また、北翔大の西村弘行学長は「卒業生の出口(就職先)が見えているのは大きなメリット。大学で学んだことを地元に戻って生かし、地域貢献する人材を輩出するのは大学の役割でもある」と述べた。
この介護予防事業を具体化させたNPOの相内俊一理事長(小樽商大名誉教授)は、「3者が連携することで持続的なソーシャルビジネスを実現することができ自治体を含めてオールウィンの関係が構築できる」と意気込む。既に赤平市や寿都町では同大を卒業した健康運動指導士が運動教室を実施しており、今後、訓子府町や津別町、斜里町、羅臼町のほか十勝管内市町村でも展開する。