IMG_8384 地域の高齢者が元気で自立した生活を送れるようにサポートする「地域まるごと元気アッププログラム(略称・まる元)」がソーシャルビジネスとして注目されている。コープさっぽろ、小樽商科大学、北翔大学、NPO法人ソーシャルビジネス推進センター(相内俊一理事長)が自治体の協力を得て運動教室を展開、要支援や要介護にならずに高齢者の健康を維持、併せて自治体財政の負担軽減に結び付けて行くもの。運動教室に高齢者が集うことで地域コミュニティの増進を図れる効果もある。(写真は、まるげんのロゴマークを手にする相内俊一理事長)
  
「まる元」のきっかけになったのは、小樽商大教授だった相内氏(2012年3月に退官し現在、同大名誉教授)が、09年にコープさっぽろの店長勉強会で「生協運動の原点は社会貢献運動。その場合、自己犠牲ではなく利益を上げて持続可能なソーシャルビジネスを模索するべき」と提案したこと。これを受けて、小樽商大とコープさっぽろはソーシャルビジネスの共同研究を始めた。地域に点在するコープ店舗に買い物に来てもらうためにも高齢者の健康維持が不可欠で、商売と社会貢献を結び付けるツールとして地域の高齢者を元気にする運動教室が最適という結論を得た。
 
 コープさっぽろは、09年に人口減少が続き食品スーパーの採算は合わないとされた赤平市に出店したことを契機に、同市の協力を仰ぐ形で「まる元」をスタートさせた。
 
「人口減少が続く過疎地に店舗を作っても高齢者が自分で買い物に来ることができなければ店舗としては成り立たない。70歳以上の人が元気に買い物に来てくれれば店舗の採算は向上し、そうした高齢者自身のためにもなる。さらに要支援や要介護にならなければ自治体の財政負担も軽減できる」(相内理事長)
 
 具体的には、1人1ヵ月3000円の費用で1クラス20人ほどの参加者を募り体力別に3クラスを設置、自治体の集会所などを借りて週1回運動教室を開く。健康運動指導士が参加者の体力に合わせた運動メニューを提示して継続して取り組んでもらう仕組みで3000円のうち、本人負担は1000円、2000円は自治体に高齢者支援として支出してもらう。
 運動教室では北翔大が協力、3ヵ月に1度体力測定を行ってデータを同大の生涯スポーツ部が解析し運動メニューにフィードバックさせる。効果が実際にあるのかどうかが科学的に実証されるため自治体にとっても費用対効果のリアルデータとして活用できる。
 
 参加した高齢者の調査では、「身体が軽くなった」「1週間に1回心から笑えるようになった」「友人に会えるのが楽しみ」などの声が寄せられ、ひきこもりがちだった生活から脱却し地域のコミュニティが復活する効果も出ている。
 
 現在、「まる元」を実施している自治体は赤平市のほか余市町、沼田町、芦別市などがあり、自治体が絡まない教室として倶知安町でも実施されている。また、来年以降には黒松内町や道東の斜里町、美幌町などでも開設する予定。
 
 相内理事長は、「自治体単独での高齢者支援は(財政面などによって)限界にきており、民の知恵と大学の専門的知識をコーディネートしたソーシャルビジネスが地域に住む高齢者の支援に役立つ仕組みになるだろう。今後は運動教室だけでなく認知力回復のプログラムも取り入れて道内の各自治体に普及させていきたい。地域をまるごと元気にしていくこのプロジェクトは“政治の実験”でもある」と語っている。


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