旭川医科大学を巡る学長VS.学長選考委員会のバトルはより激しさを増してきた。解任か、辞任か、コロナワクチン接種が進む中で全国の注目を浴びることになった。この騒動、旭川医大の学生や市民にとって、不名誉極まりない。解任にせよ辞任にせよ、国立大学法人トップの引き際としてはあまりにもお粗末ではないか。(写真は、吉田学長解任を決めた学長選考会議の西川雄司議長)

 旭川医科大学の学長選考会議(西川雄司議長=同大副学長)は22日、吉田晃敏学長(69)の解任を萩生田光一文部科学大臣に申し出ることを決めたと発表した。西川議長は「参加した全員の合意によって解任の申し出を決定した。(吉田学長の)職務上の義務違反と学長に適しないことを認定した」と述べた。

 その理由について、新型コロナウイルス感染者受け入れを主張した古川・旭川医大前病院長に対する不適切な対応、複数名の職員に対するパワーハラスメント、執務時間中の飲酒、任期切れの学長補佐に対する不適切な支出など7項目を挙げた。「(吉田学長の)いびつなガバナンスを長い間、容認、放置したことで教職員に深い傷を負わせ、大学の価値を低め、学生や市民に深い失望感を与えた」と西川議長は語り、大学の正常化に取り組む考えも示した。

 吉田学長を巡る一連の不祥事に対し、学内では現役教授らでつくる「旭川医科大学の正常化を求める会」が過半数を超える署名を集めた。また、元助教授らが中心となった「吉田晃敏学長のリコールを求める全国有志の会」が、全国から約1万3000人の署名を集め、大学に提出していた。

 選考会議は学内職員の署名を有効と認め、今年3月中旬、3人の弁護士による調査委員会を発足させ、6月上旬にはコロナ感染者の受け入れを進言した古川病院長に辞任を迫ったのはパワハラと認定したばかりだった。

 いよいよ学長選考会議が吉田学長の聴聞を行う段になって、吉田学長は先手を打つ。聴聞の前日に当たる今月17日、吉田学長は代理人弁護士を通じて萩生田文科相に辞任届を提出したからだ。

 吉田学長は2007年、学長に就任、全国の国立大学法人では異例の14年間という在任期間。オーナーでもないのに、これだけの長期間トップに君臨すること自体が不自然。それを許した医大内部のガバナンスも問われなければならない。こうしたことを見越した吉田学長のしたたかさは半端ではない。代理人を通じて「選考会議は解任の結論ありきで強引に進行されていると考えざるを得ない」と批判。先手を打って辞任届を文科相に提出したことによって、聴聞を行わずに解任を決議した学長選考会議の瑕疵を追求できるような措置を講じた。

 ともあれ、解任か、辞任かの最終判断は文科相に預けられることになる。同様の解任申し出があった北海道大学の場合、文科相は申し出を受けて当時の総長を解任した。ただ、文科相の解任判断には、当事者の聴聞が必要なため吉田学長がそれに応じるかどうかが注目される。
 この泥沼闘争は、一向に衰える気配はない。ただ、吉田学長の任期切れ学長補佐への支出は、補佐の大病による不運が重なった混乱の中で行われたとも言われており、不適切の評価は関係者によって異なる。学長一人をクロ一色に染め上げていくことは、いずれ反動の噴出を招きかねない。 


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