旭川医科大学の吉田晃敏学長(69)が17日、辞意を表明した。吉田学長の代理人弁護士の中村元弥氏(1961年兵庫県西宮市生まれ、京大法卒、判事補から97年旭川弁護士会登録)が会見で、経緯と理由を説明した。吉田学長は15日付で荻生田光一文部科学大臣宛てに内容証明郵便で、17日をもって学長を辞任する届けを送付した。(写真は、旭川医科大学・吉田晃敏学長=2020年1月28日の会見当時)
中村弁護士は、「(吉田学長は)解任請求を巡る混乱を学内にもたらしたことについて、自身の不徳の致すところと反省している。これ以上大学に混乱を招くことは本意でないと考え、身を引く決意をした」と辞任理由を説明した。
混乱の元となった吉田学長を巡る一連の疑惑は、新型コロナウイルス感染患者の旭医大病院への入院を巡って意見が対立した、前大学病院長に対するパワハラ発言や市立滝川病院から多額の顧問料を長年受け取っていたこと、酩酊状態での言動などが報じられたことから始まった。吉田学長は就任以来、全国でも珍しい14年間の長きにわたり在籍、学内外で絶大な発言力を有していた。
しかし、一連の疑惑が噴出して以降、学内では吉田学長に対し、教授らでつくる「旭川医科大学の正常化を求める会」や「吉田晃敏旭川医科大学学長のリコールを求める全国有志の会」などが、解任を求める署名を大学に提出していた。
同大学の学長選考会議が、これら疑惑に対する審議を開始。第三者による調査委員会は6月1日、吉田学長が新型コロナウイルスの感染患者受け入れを進言した前病院長に辞任を迫ったのは、パワハラ発言と認定。学長選考会議委員の任期が切れる6月末までに、吉田学長の解任の判断が出ると言われていた。
中村弁護士は「選考会議は解任の結論ありきで強引に進行されているものと考えざるを得ない」と語り、疑惑に関しては「パワハラはない。それ以外のことで、もしあったとしても解任に値するものではない」「解任請求の理由が吉田学長に明らかにされていない」と選考会議を批判した。吉田学長が自ら出席して会見を行うことや、学内での説明会などを行うことについて、中村弁護士は「現在、予定していない」とした。
今回の吉田学長の騒動を通じて想起されるのは、北海道大学の名和豊春前総長(67)の解任事件。名和氏は総長選考会議が設けた調査委員会で資質に欠けるとした報告を受け、同会議で解任決議され、文科省の名和氏への聴聞を経て昨年6月に解任された。名和氏は解任決議の前に辞任届を総長選考会議に提出したが、解任審査中として受理されなかった。吉田学長の場合、文科省に直接辞任届を送付したが、文科省は大学自治の観点から学長選考会議に判断を仰ぐ可能性もある。なお、名和氏は解任取り消しなどを求めて訴訟中だ。