北海道大学前総長の名和豊春氏(67)の解任を巡る取り消し訴訟の一環として、名和氏など原告側が求めた(名和氏の)パワハラに関する文書が、北大側に存在しなかったことが明らかになった。9日の個人情報不開示取り消し訴訟で、北大側はパワハラに関する文書不存在を認めたことで分かった。これによって学内規定に基づく文書が存在しない中、「パワハラ」がひとり歩きして名和氏の解任に至ったことが明らかになった。(写真は、9日のパワハラ情報不開示処分取り消し訴訟の第2回弁論後に行われた原告団報告会。中央が名和豊春氏、左が佐藤博文弁護士)
名和氏は、北大総長選考会議による調査委員会の報告を基に、ハラスメントなど不適切な言動があったとして文科省から昨年7月に解任された。その後、名和氏は文科省と北大を相手取って解任取り消し訴訟を提起。また、北大に対して、自身のパワハラに関する個人情報不開示処分の取り消しを求めた訴訟も同時に提起していた。
9日、個人情報不開示処分取り消し訴訟の第2回弁論が行われ、北大側は当初の「文書が存在するか否かを含めて不開示」との主張を一転、文書そのものが存在しないことを陳述した。このことによって、学内規定に基づく「パワハラ」被害や相談・調査、認定はなかったことになり、解任の根拠とされた「パワハラ」が存在しなかったことになる。
北大側は、こうした文書の存在がなかったにも関わらず名和氏の解任を実行したもので、学内規定に基づかない解任だったことが明確になった。今後は、総長選考会議の調査報告書に記載されたハラスメントに関する記述の正当性が問われることになる。
名和氏は、「2年半にわたって戦ってきたが、やっと自分が(パワハラを)やっていないことが認められた」と話した。弁護団長の佐藤博文弁護士は、「北大のパワハラ文書不存在は、総長解任取り消し訴訟の重要なターニングポイントだ。北大で正式にパワハラ認定していないのに、なぜパワハラがひとり歩きしたのか。北大は学内外に向けてパワハラ報道等を否定すべきだったのに何もせず、今日まで放置した。本体の解任取り消し訴訟の手続きの問題として、重要な問題になっていくだろう」と話している。