大学改革初年度で新入学生823人と着実な成果、麻田信二・酪農学園理事長が「生き残る大学に変える」

道内大学・教育

 酪農学園大学は今年度からこれまでの学部制を取りやめ、2学群5学類制を採用、「農・食・環境・生命」を全面に打ち出した教育改革を実施した。改革の大きな狙いは新入学生の確保だ。「改革元年となる今年度は定員700人に対して823人が入学し良いスタートを切ることができた。2年目となる来年度が勝負になる」と麻田信二理事長(63)は語っている。(写真は麻田信二理事長)
 
 酪農学園は、とわの森三愛高校と酪農学園大学を擁する学校法人。とわの森三愛高校は既に昨年度から教育カリキュラムを変更、昨年度は定員に対して9割の入学生を確保、改革2年目になる今年度は定員340人に対して355人が入学、充足率100%を超えた。
 
 大学改革は、今年度からスタートしたが、出足は好調だった。学校法人酪農学園の麻田信二理事長に大学改革の狙いと見通しについて聞いた。
 
――なぜ大学改革を実施することになったのか。
 
 麻田 18歳人口が減少する中で、高等教育機関として学力の維持と向上を目指し、選ばれる大学として生き残るためには必要だった。10年先というよりも50年先でも生き残れる大学像を想定した改革だ。
 
――文科省に新教育体制が受理されたのは昨年6月。短い期間で良く受験生に浸透したのではないか。
 
 麻田 文科省に2学群5学類が受理されたのは昨年6月末。それから10ヵ月足らずで受験生にも理解さしもらい、多くの入学生を確保することができた。短い期間で学長や教職員の方々は本当に良く動いてくれたと思う。
 
――それぞれの学群学類の特色は?
 
麻田 獣医学群では新たに獣医保健看護学類を設けた。定員50人のところ60人に増やしたが志願者も多く辞退者も少なかった。農食環境学群の食と健康学類では、管理栄養士を目指す入学生が多いが今年度も多くの志願者があり辞退者も少なかった。定員よりも多く取った。
 
 当大学の管理栄養士試験合格率は4年連続で道内トップの実績があり、こうした特色を生かしたところが受験生にも評価されているのだろう。
 循環農学類や環境共生学類は、持続可能な社会や生命産業を担う人材を育てていくことをベースにしている。
 
――大学間の競争は激しい。各大学は入学生確保に躍起になっている。
 
 麻田 当学園は大学改革によって受験生から選ばれる大学として徐々に倍率も高くなっていくだろう。受験生が全員入学できる大学も出てきている中で、当大学は勉強をしなければ入れない大学として高等教育機関の使命を果たしたい。農業や酪農だけをやりたい人は大学に行かなくても良いのではないか。当大学では、広く農業を学ぶと共に将来の社会を担える人材を人間教育で育てたい。
 
――道外の受験生が多いのも特徴ですね。
 
 麻田 道外の学生比率は5割を超えている。道内の大学は、道外の学生を引っ張ってこないといけないしそれだけの魅力と実績がなければならない。当大学と北大は道外から学生を引っ張ることができると自負している。
 
 麻田理事長は大学が生き残っていくには、建学の精神を学生に染み込ませるための『自校教育』の必要性を訴える。「北大でも京大でも建学精神を浸透させる自校教育に力を入れており、私立大学は特にその点が大事。酪農学園なら三愛精神と健土健民。自校教育を行うことが人間教育に繋がる」と強調する。
 
 学部制から学群学類制に変更した改革初年度は、入学生が定員を上回ったことで結果が出たが、このペースで入学生が確保できれば大学経営も安定する。
 
 残る課題は校名変更だが、酪農学園大学はかつて短大時代に北海道文理科短大と名称を変更したことがある。
 
「いずれ校名変更をせざるを得なくなる」と麻田理事長は言うが、目下のところは大学改革の実績を積み重ねることにウェートを置いているようだ。今年7月から理事長5年目に入る麻田氏の大学改革は静かに進んでいる。

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