北洋銀行と北海道大学は包括連携事業の一環として2011年度から市民向けの医療セミナーを5回開催してきたが、今年度の締めくくりとして「会社と従業員の健康を維持するために」をテーマに特別セミナーを開催した。講師は、ピロリ菌の権威、浅香正博北大がん内科学特任教授と濱田康行札幌国際大学長。両氏の講演内容を2回に分けて掲載する。(写真は、8日行われたセミナーで講演する浅香正博教授)
 
 浅香教授は『がんでなくならないために』をテーマに講演。がんで死亡する人は年間30万人で男性の2人に1人、女性は3人に1人。年間のがん患者数は2005年の180万人から12年には230万人になると見られており、7年間で50万人も増える見通しで、その70%が65歳以上の高齢者が占めるという。
 
 なぜ、がんが増えているのか。浅香教授は、「日本が世界一の長寿国になったため。がんは遺伝子の病気で長寿になると再生能力が衰えてがんになるケースが多い」と述べ、胃がんや大腸がんの発生率のピークは85歳以上というデータも示した。
 
 通常、がん細胞は人の持つ免疫細胞によって99・99%は壊されるが、細胞のコピーミスがおきて10億回の分裂を経るとがん細胞が検査で分かるまで成長する。その期間は10~20年。
 
「がんは高齢になると避けられない」と浅香教授は言うが、「生活習慣を改めたり感染源を遮断することで予防できる」とした。
 
 一般的には肺がんと大腸がんなどは生活習慣から由来し胃がんや肝細胞がん、子宮頸がんは感染症由来とされる。日本人のがん患者のうち感染症由来と見られるのが25%も占め、この比率は米国の10%、欧州の6%と比較しても極めて多い。
 
 がん対策基本法では、これまで感染症由来のがんについては明記しておらず、「今年5年ぶり改定されるが、そこに感染症由来のがんについて明記され予防対策が進むことになる」と浅香教授。
 
 生活習慣由来のがんについては、喫煙とアルコールが大きな影響を及ぼすとして、「煙草は60種類の発がん物質が含まれており非喫煙者と比べてがんになる比率は1・5倍に高まる。喫煙に加えてアルコールも一定量以上を毎日飲む人は2倍になる」と語り、煙草は辞めてアルコールは一定量以下にすることを勧めた。
 
 がんにならないためのアルコール量について浅香教授は、「ビールなら1本500ml、日本酒は1合、ウイスキーダブルは60ml、焼酎は0・6合、ワインは200ml」とした。
 
 がんと肥満の関係についても言及し、「日本人は欧米人に比べて肥満に弱い民族で日本人のインスリン分泌は欧米人の半分。肥満のもとになる脂肪細胞にはエストロゲンというがん細胞を促進する物質が含まれている」と述べ、「運動をすれば大腸がんの発生率を40%減少できるというデータがあるが、1日に30~60分の激しい運動をして初めて予防効果が出るため、現実問題として難しい。生活習慣由来のがんは予防しにくいが禁煙して飲酒量を控えれば90%は予防可能」と訴えた。
 
 前述した感染症由来のがんについて、「がん対策基本法にヘリコバクター・ピロリ菌という文字が入り、初めて国はピロリ菌と胃がんの関係を認めた。ピロリ菌を除菌することで胃がんを予防する有用性が公に認められることになる」と胃がん撲滅に向けて予防策が進むことに浅香教授は大きな期待感を示した。


4人の方が「この記事が参考になった」と言っています。