JR札幌駅と大通を結ぶ地下歩行空間が来年3月に完成、都心部賑わいの呼び水になり3選を目指す上田文雄市長の実績として選挙戦の追い風にもなりそうだが、こうした光の当たる話題に隠れがちなのが影の話。地下歩行空間によって困ったことが起きてしまったマチの声を拾い上げてみる。


駅前通から少し離れたところにあるペンシルビルは、昭和40年代に建てられ見るからに風雪に耐えた星霜を外壁に刻んでいる。地上5階建て、各階は50坪程度のワンフロアー。今年8月には長い間のテナントだった金融サービス関係の企業が退去し、現在は空室状態。
幸い、1~2階には次のテナントも決まりビルオーナーも内装や空調を整備して来年早々のオープンを待ちわびる日々を送っている。
ところが、最近あることが分かった。ビルの前の歩道部分に自前で敷設したロードヒーティングの設備が今年の冬には使えないというのだ。
市は地下歩行空間の工事に伴って、このビルの前を通る道路下に資材置き場を設置した。道路の直下を掘り起こす過程でロードヒーティングの設備を撤去せざるを得なかった。地下歩行空間の工事もほぼ終了、すみやかな原状復帰が行われるものとそのビルオーナーは思っていたのだが、市からは「原状復帰は来年の雪が降る前になります」と知らされた。
市は応急策としてゴム状の融雪マットを敷くことや降雪があった日には小まめに責任を持って除雪することを約束したというが、ロードヒーティングによる融雪と比べてかなり見劣りするのは否めない。
新しいテナントを迎え新年から新たな気持ちでビル運営に取り組もうとしていたオーナーは、我慢せざるを得ず、出鼻を挫かれたように気持ちが晴れない。
地下歩行空間は札幌のマチの発展に大きな役割を果たすことは間違いないが、その影では取るに足らないと思われるような不満のかけらが数多く散らばっている。それらを掬う市政も問われている。
(写真は、ロードヒーティングが使えなくなった歩道部分)

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