鈴木直道北海道知事(38)が、29日の道議会でIR(統合型リゾート)の道内誘致について2021年7月までの国への認定申請を見送る方針を表明した。鈴木知事にとって初の大型政策判断とも言えるもので、この判断が今後3年間の鈴木道政のカラーを決める分岐点になりそうだ。(知事として初の大型政策判断をした鈴木直道知事、写真は2019年4月23日の初登庁時)

 道の試算ではIR投資額は2800億円から3800億円で道内経済活性化には大きな効果があるとしている。さらに運営により年間で約1500億円を超える売上高があるとも試算されている。高橋はるみ前知事(現参議、65)時代の2014年からIR誘致を巡る動きが本格化、鈴木知事が誕生した今年4月に鈴木知事は「道民目線で総合的に判断する」と表明した。その後は海外事業者や苫小牧市議会、道内経済団体が知事に誘致を迫り、知事包囲網は着々と築かれたように見えた。

 しかし、鈴木知事は少なくとも道民には胸の思いを気づかれないように振舞った。誘致か、見送りかのどちらを決断してもその根拠が説明できるスタンスを維持しようとした風に見えた。そうした「踏み込まず、遠ざけず」の姿勢は高橋前知事時代とダブり、いつか見た光景が繰り返された。

 知事は、リーダーであって判断者ではないはず。目標とそれに至る道筋を示し、信念をもって世論の理解を得ていくことが求められる。IR誘致を進めるにしても見送るにしても、知事自身の考えが最後まで道民にわからなかった。選挙戦で見せた「ピンチをチャンスに変える」元気の良さは見られなくなっていた。

 世界的に若者たちの環境保護に対する取り組みが進む中、IR候補地の苫小牧市植苗地区は希少生物が生存する自然豊かな地域であり、見送り表明はこうした自然を守ったと前向きな姿勢をアピールできる面もある。しかし、今回の鈴木知事の判断は「リアリスト」にも「ロマンチスト」にもなれない一面を示した。知事の若さからくる突破力を期待していた道民も多かったはず。どうせならすでに開発が進み、余剰地の多い苫東地区を候補地にすると表明しても良かったのではないか。

 賛否渦巻くIR誘致について鈴木知事が下した見送り表明は中途半端感が否めない。それは見送りの背景に知事の顔が見えないからだろう。


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