税収の減少に苦しむ自治体が外郭団体の基金や積立金、出資金などを返還させ始めている。道と札幌市もこうした外郭団体の評価点検を外部委員に任せた上で、外郭団体の「埋蔵金」を新たな財源にしようと動き始めている。しかし、実際の動きは鈍く、道が50の外郭団体に対して141億円の出資金返還を求めたのに対して実現したのはわずか7億円。


地方財政に詳しい北大大学院法学研究科教授の宮脇淳氏に外郭団体の「埋蔵金」返還の必要性や返還を進めるための方策などを聞いた。
――外郭団体の「埋蔵金」とはどういう形で貯め込まれていますか。
宮脇 埋蔵金は、外郭団体の利益準備金など剰余金として計上されているが、それを長期債権で運用しているケースがある。剰余金は、本当に余っているものなのか、それとも将来に向けての持続的な行政サービス維持のためのものなのか、その精査が必要になる。行革にはパフォーマンスも必要だが、民主党が中央で行った事業仕分けのような公開パフォーマンスで道民、市民の関心を惹くことも外郭団体の埋蔵金発掘のためには必要なことかも知れない。
――資金運用が本当に必要なのかどうかも点検しなければなりませんね。
宮脇 札幌市の外郭団体では安定的資金運用として30~40年の長期運用をしているところもあるが、途中売却しないから損失は発生しないという。しかし、数年に一度は業務の見直しが外郭団体には必要なのではないか。「長期安定のため」を錦の御旗にして恒常的に剰余金を出し、それを貯め込んでいいのかどうかを議論しなければならない。
もちろん、剰余金を取り崩すと行政負担が増したり行政サービスが低下するのであれば、返還の必要性は薄いのは当然だ。
――道や市が外郭団体に「返せ」と言っても、それぞれの団体には存在意義があるから進まないのではないですか。
宮脇 「返せ」「返さない」では前向きな議論にはならない。他府県の似たような出資団体と比較して客観性を持たせたうえで返還を求めていくのが筋道だと思う。
しかし、道は他府県の団体との比較をやりたがらないという印象を私は持っている。
――道と札幌市の取り組みに差はありますか。
宮脇 札幌市は早くから取り組んできたので、ある程度の実績があるが、道は殆ど手付かずだ。外郭団体の「埋蔵金」返還は、出資金、補助金、人的補助のすべてに関わってくるので、自治体財政が厳しい中、外郭団体の業務見直しとセットで行う必要性は年々高まっている。
(以下、明日に続く)

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