万代・倉橋純一代表取締役インタビュー「iPhone、メルカリ、コロナ禍が迫った変化」「成長に不可欠な成功体験の否定」

経済総合

 ――『音更店』の成功で、一定程度の人口規模ならいけると分かったわけですね。

 倉橋 そうです。苫小牧市や釧路市、北見市、旭川市など、地方を自分たちの主戦場にしていこうと。ただ、認知が必要なので、仙台市や札幌市で知名度を上げた上で、ローカルエリアに展開していこうと。

 ――店づくりで、東北と北海道で変えているところはありますか。

 倉橋 商品構成では一部変えていますが、店舗のコンセプトは、ほとんど変えていません。『万代』のターゲットを男性にしていた時は、『あやしさ』『マニアックさ』の雰囲気をわざとつくっていました。つまり、女性が来ないような店づくりをしていたのです。でも、それをまるっきり逆にして、女性が来店しやすい環境をつくることにしました。

 女性に気に入ってもらうには、クリーンで接客がきちんとしていることが大切。今までと真逆なので、会社も切り替えて、極端に言えば、今までの正解を不正解としなければなりませんでした。当然、社内に抵抗勢力が出てきますが、断行してきました。

 ――抵抗勢力をどのように抑えて、今の姿に変えてきたのですか。

 倉橋 新しい店舗のコンセプトを、繰り返し言い続けなければなりません。自分たちの会社の主たるお客さまは、女性ですと。新しい会社をM&Aしたような気持ちで取り組みました。

 ――それでも離れていく人はいる。

 倉橋 そうですね。創業の頃から勤めていた社員と袂を分かったこともあります。

 ――試練ですね。

 倉橋 お客さまからも、『前の方が良かった』と言われたりしました。よく言われたのが、『深夜枠ですごく気に入っていたのに、ゴールデンに降りてきて面白くなくなった』と。大衆寄りになってしまったと言われることもありました。

 ――今の業態の競合は。

 倉橋 ファミリーがターゲットなので、簡単に言えば、土・日に4人家族で2万円を使うところが、ライバルになります。スーパー銭湯とか回転寿司店がそうです。

 ――娯楽に対する予算の競争だと。

 倉橋 そうですね。回転寿司といっても、食欲を満たすというよりも、家族で時間を共有する目的で行く場合が多いと思います。スーパー銭湯も同じように、土・日の家族の時間を共有しているのであって、遊びに行く感覚と同じだと思います。

 ――「食」のコンテンツにも力を入れていますね。

 倉橋 クレーンゲームでは、50%くらいが食品を景品にしており、珍しいと思います。私たちは、『遊べるスーパー』というコンセプトも大事にしています。そこで大事なことは、お客さまが、ちょっと欲しくなる商品を欠品しないようにすることです。

 ――自販機で買えるペットボトル飲料も、クレーンゲームの景品になっています。わざわざ、それを楽しむ人もいると。

 倉橋 クレーンで釣り上げると、気分がスーッとするようです。釣り上げやすいように設定しているので、買うのと同じような感覚です。私は、これは新たな買い物の仕方だと思っています。釣り上げると気持ちが高揚します。人は、楽しいと思えることに渇望していますから。

 ――業種でくくると、『万代』は何になりますか。

 倉橋 激安スーパーに非常に近いと思います。今後は、『ロピア』を少しいじったようなモデルにしたいと思っています。冷蔵ケースを置けば、生鮮にも対応できます。そうした商品の開発を、メーカーなどと一緒に進めていければと思います。
 私は、人々の消費行動を観察しているので、自動車の車内を見たりしますが、車は、マーケティングの見本みたいなものです。人の観察も欠かせません。どのようなアクセサリーを付けているかも見ます。買い物というのは、自分の意思決定だからです。4人家族なら、どういう服を着ているかなど、どれくらいの金額を消費するのかと、レジも横目で見たりしています(笑)。

 ――消費行動への探求心が強いですね。

 倉橋 そうですね。中古商売をやっている時から思っていたのは、中古のものは100%売れたものということ。つまりマーケティングが済んだ商品です。一方で、世の中には、売れずに残った商品がたくさんあります。買い物をするとか、行列に並ぶとか、人間の心理的な気持ちによって、最終的にはモノは動きます。その観察は、起業してからずっとしています。

 ――そのような考えは、どこから生まれたのですか。

 倉橋 もちろん商売をしていた父親の影響も受けています。商売のロジックを教えてくれたあるスーパーの社長も、『行きつくところ、商売は人間の研究だ』と教えてくれました。人間をとにかく知ることが商売の基本だし、本質的な問題だと感じています。世の中に役に立ちたいという気持ちも大切にしています。家族4人で楽しい時間を共有したいという、社会的な課題に応えることが必要です。

 ――現在の店舗数は。

 倉橋 グループ全体では32店舗で、2026年5月期には、売上高300億円を超える予定です。

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