大泉潤・函館市長インタビュー「世界都市ランキングでトップ10入り目指す」「昆布を世界ブランドにする」

ピックアップ・リアル

 ーーふるさと納税は、自主財源の一つとして大事ですが、市長就任以来伸びています。ただ、公約に掲げた2026年度に寄付額100億円は難しいのでは。

 大泉 制度が急に変わって伸びなくなったなど、いろいろな自治体で問題が起きていますが、私は大いに期待しています。令和5年度は、ふるさと納税にほとんど取り組めず、2024年度が、ふるさと納税100億円に向けた元年でした。その年は、22億2000万円でした。返礼品のラインナップ、質が揃ってくるかどうかが、非常に大きな要因です。地元製造業の皆さんが、意欲的に返礼品のラインナップを充実させてくれました。2025年度の4月、5月は、非常にハイペースで増えています。このまま伸びていってもらいたいと期待しています。

 ーー企業版ふるさと納税はいかがですか。

 大泉 企業版ふるさと納税をしていただける企業が増えていることに、本当に感謝したい。今は、函館にゆかりがあって恩返しをしたいとか、自分たちの事業と市の取り組みや姿勢がマッチするから納税したいという声が多い。今後は、企業とうまくマッチするような、あるいは呼び込むような少し尖ったプロジェクトを立てて、企業版ふるさと納税を増やしていくことを考えていきたい。

 ーー公共施設の命名権売却も始まります。

 大泉 それを始めると、なかなか大変で一種のプロフェッショナル的な職員が必要だと思っていたので、具体的な指示を出していませんでした。しかし、ボトムアップで、「ぜひやりたい」という話が出てきました。苦労もあると思いますが、それこそ都市ブランドと直結するものだと思うので、良い展開になるのでは、と期待をしています。

 ーー函館にとって観光は、経済の要です。2024年度の観光入り込み客数は、過去最大の602万人でした。

 大泉 大変うれしいですね。ただ、人数を追いかけるだけの観光への取り組みは、時代遅れです。私の政策には、観光消費を倍増させようという項目がありますが、これに直結するのは宿泊の延べ人数です。単純に1泊が2泊になれば、宿泊代、飲食代、お土産代が増えますから。まずは宿泊数を倍増させたい。延べ宿泊数は、令和6年度に約472万人泊となって過去最高になりました。

 渡島、桧山の道南全体では約530万人泊です。函館に集中していますが、渡島、桧山の観光資源には素晴らしいものが、たくさんあります。函館に来た観光客を渡島、桧山に送り出すことも大切だと思っています。そうすれば、渡島、桧山の観光資源はもっと輝くようになります。その力を使って、どんどん函館に来てもらって渡島、桧山に送り出す好循環を形づくり、南北海道全体の延べ宿泊数を増やしたい。それを今、近隣の首長と話しています。10年以内に、道南の延べ宿泊数を、年間1000万人泊にする目標を立てましょうと近隣首長と話し合っています。

 ーーオーバーツーリズムの問題も、見過ごせません。

 大泉 函館山ロープウェイのオーバーツーリズム対策は、一定の効果があったと考えています。混雑対策というだけではなく、新たな観光スポットとして多くの方に魅力を感じていただけるよう、山頂に新展望施設を整備できないか検討しており、今年の11月頃から測量調査や地質調査を行う予定にしています。オーバーツーリズム対策とか混雑対策は、“対策”という言葉が示すように、問題が起きてから(対策を)打つと最小限の手立てになってしまいます。つまり、後手に回ってしまうということ。そうではなく、高い宿泊増加目標を設定していけば、対策という後手ではなく、攻めの誘客ができると思います。

 ーー毎年続いているスルメイカの不漁など、北海道の漁業は構造転換が求められています。現状の漁業について。

 大泉 全国的に海水温や海の環境変化で、獲れる魚種が大きく変化しています。函館のイカに関して言えば、減っていることもそうですが、獲れる時期のズレもあります。獲れ始める時期が遅くなったり、あるいは漁期の終了が遅くなったりしています。これまでは10月でほとんど獲れなくなっていましたが、例えば2024年度で言えば、11月も12月も獲れていました。なので、令和6年度は、例年10月で終わる補助金を次の年の1月まで延ばしました。いずれにしても、全国的な魚種の変化があるので、農水省や道と歩調を合わせて、最適解を模索していきたい。

 ーー函館は、どんな方向で漁業の生き残りを図っていくのが良いでしょうか。

 大泉 函館は、やはり昆布です。昆布は、漁獲量も生産高も日本一。今、さまざまな研究が実り、養殖昆布も非常に良い展開を見せています。海外からも注目されていて、昆布の成分や旨味が、肉の旨味と違って健康面でも注目されています。また、ブルーカーボンという切り口でも話題性があります。昆布を世界的なブランドにしていくことについても、しっかりと対応したい。

 ーー棒二森屋跡地の市街地再開発の進捗はいかがですか。

 大泉 全国どこでも中心市街地活性化の成功事例は、ほぼありません。それぐらい、一度空洞化したところを復活、再生させるのは難しい。しかし、函館のような多彩な強みを持っている街は、他にはないと思っています。食べ物がおいしくて、温泉があって、歴史も、景観も、世界遺産もあります。そういうものが揃っている街は、ほぼないのではないか。函館なら中心市街地の活性化はできるという確信に近いものがあります。

 棒二森屋跡の市街地再開発には、計画をつくる段階から、地域の人を含めたいろんな意見交換の場がありました。そこでの声を拾い上げ、どんな機能を持たせるか、観光客も集える機能をどう持たせるか、さまざまなジャンル別に意見を吸い上げながら、再開発計画はつくられています。基本は、地域の人々が集えて、交流ができ、憩える場であることです。そして、観光客も楽しめるものになっていくと思います。

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