ーー2025年の市区町村の魅力度ランキング1位に函館が返り咲きました。市長は、世界の都市ブランドトップ10入りを目指したいと表明されています。
大泉 人口減少のスピードは、とてつもなく早く、その中でも特に函館のスピードが速いことは先ほど話しました。これを止めるのは至難の技です。例えば、千歳だったら新千歳空港という資源もあるし、ラピダスという大きなチャンスもあります。北広島ではエスコンフィールドがあって、札幌にも近くて雇用もたくさんあります。このように、道央圏には、人口減少対策に使える切り札がありますが、函館にはその切り札がありません。
人口減少対策は、大きな変革を続けてやらなければならない。そのための最初の切り札が、私は都市ブランドだと思っています。2006年からブランド総合研究所の調査が始まって、函館は、常に1位か2位か3位に入っています。それで何か変わったかというと、それほど変わっていません。都市ブランドを生かすには、世界のトップ10に入るくらいじゃないと、切り札としては使えないということです。世界的認知度を高めて、世界で戦えるような都市ブランドに育て上げようという狙いからです。
ーー人口増の起爆剤の一つとして、北海道新幹線の函館延伸があります。しかし、札幌延伸は、2030年度末から2038年度末以降になりました。
大泉 札幌延伸が遅れると言うと、札幌やその周辺がダメージを受けるように聞こえます。もちろんそうですが、実は、函館とか南北海道でも非常に大きな損失になります。札幌まで新幹線が繋がると、函館、道南は、劇的に社会が変わります。現在は、札幌までどんな交通機関を使っても4時間くらいかかるものが、新幹線で1時間になります。経済も文化も一気に変わる社会変革が起きます。それを、生き残りの切り札にしようとしている沿線自治体はたくさんあります。
あと5年で、それがやってくるところまで来ていたのに、一気に2038年度以降に遠のいてしまい、この逸失利益は、ものすごく大きい。私が、「衝撃的な数字」という言葉を使って、延伸の遅れを表現したのはそういう意味です。
ーー函館駅への延伸にも、不透明感が出てきたのではないか。
大泉 これまでと変わりませんし、しっかり取り組んでいきます。2038年度以降まで延びてしまった札幌延伸ですが、函館駅乗り入れは、札幌駅開業と同時でなければなりません。函館駅に乗り入れをするためには、JR北海道もJR東日本も巨額の費用をかけてシステムを改修しなければなりません。札幌延伸のシステム改修と同時に函館駅乗り入れのシステム改修も行うしか方法はありません。札幌駅開業が遠のくと、函館駅乗り入れも遠のくということです。非常に残念というのは、そこも含めてのことです。
ただ、現在は、有識者会議が2038年度を目安として出していて、国が明言しているわけではありません。トンネル工事の進捗状況を見ながら判断していくという段階だと思っているので、私は、この2038年度が早まる可能性だって十分にあると思っています。ですから、これまで同様、国土交通省、鉄道運輸機構にしっかり要望して、情報も共有しながら、乗り入れを諦めませんし、これまで以上に力を入れて取り組んでいきます。
ーー市の行財政状況についてお聞きしたい。今年度予算では一般会計が赤字になりました。
大泉 さまざまな物価高騰や人件費上昇が、地方公共団体の財政に大きく反映してくる時期は、世間への影響と少しずれています。それが、令和7年度の予算編成に現れたということです。当然、これは起こるべきもので予測できたことです。確かに、今は大変ですが、これだけ人口が減少していく中で、それに合わせた職員数の管理、業務の効率化は不断に取り組まなければなりません。
行財政改革は、ある時だけ集中的に改革すればそれでいいというものではありません。常に、きちんとコントロールされていくべきものだと思います。事業評価によって、事業そのものをスクラップしていくことにも取り組みます。補助金も、ガイドラインに沿って見直します。公共施設のあり方についても、新しいプランを策定したので、それに基づいて見直しをしていきます。そして、何より自主財源をしっかりと確保していきます。この4本柱に尽きます。
並行してアウトソーシングやデジタル化による業務の効率化も進めます。アウトソーシングをしても、すぐにコストダウンに直結しないこともあります。しかし、長い目で見れば、職員数の適正なコントロールに結び付いていくので、不断の努力を続けます。