「ニセコバブル論を嗤う 」倶知安観光協会吉田聡代表理事インタビュー

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 ーー全国のスキーリゾートの中で、ニセコは違った発展の歴史を辿っているのではないですか。

 吉田 ニセコは、いち早くスキー場の施設などを外資に明け渡しました。他のスキーリゾートでは、そうしたことはなかった。でも最近、妙高高原ではシンガポール資本がスキー場を買収しました。今後は、外資によるスキー場などの買収が続いていくのではないでしょうか。

 ーーニセコは早いうちから外資にスキー場関連施設を売却したことによって、その後の発展拡大に繋がったということですか。

 吉田 最初にコクドが、ホテルをシティに売却しました。外資に売却することによって、その後のニセコモデルと言える発展形式になっていったと言えるでしょう。その先に何があるかといえば、名実ともに世界の富裕層の冬期デスティネーションになっていくということです。もちろん、冬期だけではなくて、夏期もコンドミニアム所有者を中心に「涼しくて良い」と来訪者が増え始めています。

 新たにフィリピン資本が、ホテル建設に入りました。それが完成すれば新たに400室増えます。価格帯はミドルを想定していると言います。外資は、香港、シンガポール、韓国、フィリピンと広がっていますが、中国本土の投資はありません。そういう意味では地政学的リスク、政治的リスクも軽減できています。

 ーー―日本企業の投資は難しいのでしょうか。

 吉田 日本の不動産会社やリゾート会社は、バブルの失われた20年、30年を未だに引きずっていて、視察には来ますが投資をしようとしません。ニセコへの日本企業の投資は、ほぼない状態です。既存の施設を所有している東急や北海道中央バスといった企業が、これからどう投資を増やしていくかということになるでしょう。

 ーー日本企業は、視察だけで終わっているのはなぜでしょう。

 吉田 私には分かりませんが、ニセコ投資に一番後ろ向きだとされているのは国内の金融機関ではないでしょうか。これだけ、外資が資金を借りて開発したいと言っているのに、日本の金融機関は貸そうとしない。例えば、カナダでは、カナダに投資する外資に対して、地元の金融機関が資金を融資する制度があります。日本の金融機関は、外資がデフォルトを起こした時に、どうやって債権回収をするのかということばかりを気にしている。ニセコでG20観光大臣会合が開催された時、地元金融機関の頭取は、20億円を用意して外資に融資したいと言っていましたが、結局実現しなかった。

 ーー北海道新幹線開業と後志自動車道の開通が、さらにニセコの発展を後押ししますか。

 吉田 北海道新幹線開通により、東北からのお客が見込めます。また、札幌とは25分で繋がりますから、札幌圏のお客もさらに増えるでしょう。ただ、倶知安町は、支店経済の側面があるので、新幹線と自動車専用道の開通で、支店が廃止されてしまう可能性があります。こればかりは実際に開通してみないと分かりませんが、全てが良い方向に向かうとは思っていません。

 羊蹄山麓の真狩村、喜茂別町、留寿都村、京極町では、ニセコで働く外国人が住み始めています。倶知安町、ニセコ町、蘭越町は土地価格上昇で住宅を買えないから、スキー場に通うならそれらの地域からでも十分可能ということで、山麓市町村の需要が高くなっています。中には、岩内町から通っている外国人もいます。そうした広がりがあるため、倶知安町から定住人口が減っていく可能性はあります。

 ーー地元民が心配していることはあるのでしょうか。

 吉田 雪さえきちんと降ってくれれば、全く心配ないと思います。倶知安町の統計では、昭和45年に年間降雪量が20mありました。それが、令和2年には6m80cmまで減りました。今年は、さらに減っています。50年間で降雪量は半減以下になっています。次の50年でどうなるかです。いつもなら、5月の連休まで、スキー場は運営できますが、今年は難しいかもしれない。

 ーー2、3年前も、5月の連休まで滑れないと言われていました。

 吉田 あの時は、それでもスキー場は運営できました。今シーズンは、それを上回る雪の少なさです。今後、スキー場の好適地が北海道の北に移る可能性があります。名寄市のピヤシリスキー場の周りを、既に外国人が買っていますし、旭川もそうです。富良野には、十勝岳があるので、スキー場の規模はニセコよりも小さいですが、雪が少なくなる心配は、それほどないと思います。それらの地域に比べると、ニセコは非常に心配です。雪のないニセコは、想像したくありません。

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