アイン大谷喜一社長が語る赤裸々な失敗談、北海道経営未来塾で傲慢さに戒め

経済総合

「臨床検査とドラッグストアを主力事業として店頭公開すると、資金が集まってくるからどんどん投資した。食品スーパーの『ジョイ』と組んでショッピングセンターを作り、スーパーとドラッグストアを4ヵ所くらい出店した。ドラッグストアには調剤薬局を併設、クリニックも入れるようにした。建物オーナーは別にいて、当社がサブリースも行う契約。絶対に成功すると突っ走ったが、クリニックは入らずテナントが集まらない。その間にも賃料は当社が払わなければならず、そのうちに近隣に大型ショッピングセンターができ、客を取られてテナントも抜けていく。当社は完全に赤字の垂れ流しに陥った。何か悪いことが起き始めると、連鎖的に悪いことが起きる。そういう時に拓銀が破綻した。しかし、私はちょっと前に気づいた。ダメだ、このままでは倒産してしまうと不採算事業から撤退を開始した」

「とにかくドラッグストアをやっているならホームセンターも家電量販店もできるだろうと考えて多角化した。でも冷静に考えたら、ホーマックやヤマダ電機に勝てるはずがない。当然ドラッグストア以外は赤字になる。2年間赤字で20億円の赤字も計上した。その段になって、ようやく誤りを認めて役職員に頭を下げ撤退の理解を得て、ホームセンターと家電量販店の事業を売却した。それが拓銀破綻の5ヵ月ほど前だった。多角化を見直して、事業を整理して拓銀破綻の激震に遭遇せずにすんだ。帳簿上は大赤字だったが、事業を整理したのでキャッシュがあった。それで何とか持ち応えて当時始めていた調剤薬局に舵を切ることになる。そのことによって、2000年からV字で回復することができた」

「立ち直ってきた時に何を考えていたか。企業が大きくなっていけばいくほど判断を間違うということだ。事業をどう進めていくか、本当に知恵を絞ることが大切だと思う。一発逆転で関連性のない市場に出ていったり、企業買収をして中身を変えようとしたりしてもうまくいくはずがない。立て直しには、今の事業と関連するところ以外に出て行くことは危険だ。ともあれ、私は成長は全てを癒してくれると思って、成長することに挑戦してきた。しかし、本当の企業の強さというものは、私が経営から退いた後に分かるもの。今はまだ私も元気だが、この後にどういう後継者が出てくるか、それによってアインの将来が決まると思う」(終わり)

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