ーー2017年2月にハワイ州ホノルル市に『玉藤カパフル店』を出店しましたが、2号店の計画はありますか。
中西 ハワイの現店舗は、2017年度のSNSの新規飲食店投票で全米22位、ハワイ州で1位に選ばれました。今年は、ハワイでコロナに勝った唯一の飲食店と地元では言われています。テイクアウトに切り替えても売り上げが落ちず、他の現地の飲食店との差が大きく開いたからです。この余勢を駆って、ハワイで2店舗目の出店を計画しています。当初予定していた出店場所がコロナで白紙になったため、現在は新たに出店場所を探しているところです。
ーーハワイ出店で得た教訓はどんなものでしょうか。
中西 日米の会計システムの違いがよく分かりました。ハワイと日本では全く考え方が違います。入出金や税金の対応はアウトソーシングしている企業が多く、当社もハワイの現地企業がアウトソーシングして対応しています。私たちが現地でやっていることは、利益をどう使うかを考えることです。労務管理の考え方も日米では違います。米国は契約社会で訴訟が日常的に起きます。現地法人では労務契約管理を徹底し、双方の合意を得ない限り採用しないようにしています。会計と労務管理のことをハワイで学んだことは大きい。米国では当たり前になっていることは、必ず日本にも普及します。ハワイ出店で先に学んだことは、これからの時代にとても役に立つと考えています。
ーー外食事業での新たな展開をどう進めますか。
中西 新たな展開は、次の世代に提案してもらいたいと考えています。『牛角』や『まいどおおきに食堂』は私が見つけてきて業態開発をしてきました。これからの時代にどういうビジネスが伸びていくかは、新しい世代が考えた方が早く適応できるでしょう。彼らが失敗しても良いくらいの現預金をしっかり会社の中に蓄えておくことが、私をはじめ取締役の役割だと思っています。外食産業の売上高営業利益率は、8%が優良企業の目安です。当社グループは、5~8%で推移していますが当面10%を目指していきたい。
ーー内部留保も厚いようですね。
中西 東日本大震災以降、こうした災害が発生して事業が継続できなくなっても、従業員の給料を半年間払い続けられる現預金を用意しようと決めました。東日本大震災の時、東北の6店舗が営業できなくなったため、約15人の従業員を解雇した経験があるからです。解雇によって失業保険がすぐに彼らに入ることも考慮したからですが、その選択は、ある意味でお金の面で正しかったかもしれませんが、彼らが当社にどういう思いを抱いたか、それを考えると経営者として悩まざるを得ませんでした。そういうことがあったため、従業員の給料を数ヵ月間は払い続けられる企業にしていこうという決めたわけです。現在は、ようやく3ヵ月くらいまで対応できるような内部留保を持つことができるようになりました。
ーー後継者についての考え方は。
中西 どうきゅうは同族経営ではないので、これからも同族経営は選択しません。当社の取締役の中で若い4人は就任4年目になりますが、様々な経験をしているのでその4人の中から引き継いでくれれば良いと考えています。大きな課題は株式の譲渡。私は半数以上を保有しているので私の支配権を外さないと老害になってしまいます。そのための作業をこれからしていかなければならない。一株当たりの株価が上がっているので譲渡するのも大変。株式を公開すれば株価調整ができますが、公開すると投資家目線で経営しなければならず、短期で結果が出にくい当社のような業態は難しい。私の株を、少しずつ時間を掛けて均等に割り振って譲渡していけるようにしたい。
ーー何年後にバトンを渡しますか。
中西 それは分かりませんが、そのうち自分を超える人材が出てくると思っています。その時に譲る覚悟を今からしておけば良いと考えています。
ーー本日はどうもありがとうございました。