官公庁や民間企業、金融機関、社員寮、病院、小中学校などの受託給食事業と「とんかつ玉藤」などの外食事業を展開している、どうきゆう(本社・札幌市豊平区)。同社は、コロナ下で「ヒューマンビジネスカンパニー」を標榜、次代を切り開く企業文化の醸成に力を入れている。外食事業の競争は激しいが、同社はこの「ヒューマンビジネスカンパニー」を目指すことによって顧客満足度を高め、人間味を新たな付加価値として提供していく考えだ。中西泰司代表取締役に、どうきゆうが目指す企業像と実現へのアプローチを聞いた。〈なかにし・たいじ…1954年生まれ、72年室蘭工業高校卒。日鉄セメントを経て75年住友石炭鉱業のスーパー部門「ジョイ」入社。86年どうきゆう入社、取締役、専務を経て2000年代表取締役就任〉
ーー受託給食事業、外食事業を展開していますが、直近の業績を聞かせください。
中西 2020年9月決算は、前期比90%の約32億円の売り上げになりました。業態別では、『とんかつ玉藤』など外食事業は同108%、給食事業は同80%でした。給食事業は、受託先の企業の中に給食を取りやめたところもあったので減収となりました。グループのホクショク、DOKYU USAなどを含めた連結売上高は約45億円です。
コロナに関連した支出はこれまでに約1億5000万円。今年2月29日の鈴木直道知事による緊急事態宣言の発出以降、外食店舗では営業休止や営業時間の短縮を実施しています。当初から従業員やパートの給料を下げないことを決めていたので、売り上げが落ちた分だけ人件費負担は当然高くなります。その結果、金融機関から調達した資金も含めて約1億5000万円が出ていった格好です。コロナ対策として、手元資金1億円と銀行借り入れ2億円の計3億円を用意しましたが、その半分をこれまで支出したことになります。
給食事業は売り上げの6割を占めるメイン事業ですが、コロナによってテレワークや在宅勤務など働き方が変わり、社員食堂などの利用も少なくなりました。また、食堂の席数を減らしてソーシャルディスタンスを確保する受託先も増え、営業環境は厳しくなっています。受託先は約60ヵ所で小中学校向けは事業組合で受注しています。当社は道内最大手で、他社との競合はそれほどありません。給食事業はよほどのことがない限り、継続して委託するのが一般的。何か問題が出れば違う業者に入れ替わる場合はありますが、そうでなければ受託は継続します。
ーーその給食事業の今後の展望はどうですか。
中西 今後は厳しい市場環境になるとみています。コロナが収束してもテレワークの普及や時間差出勤が増えていくと予想され、伸びはあまり期待できません。今後の給食事業は価値競争になっていくでしょう。委託先からは、『温かいものを出してほしい』、『北海道の食材を主体的に使ってほしい』など様々な要望がありますが、臨機応変に対応できるかどうかが問われる。受託先が100ヵ所有るとそれぞれ違うメニューが成り立つのがこの業界。それらをどうコントロールできるか、給食事業の価値競争が生き残りの鍵になってくるでしょう。
大丸札幌店では、給食事業を受託していますが、セブンーイレブンと法人契約をして同店の従業員向けにしてFC店舗も出店しています。コンビニエンスストアも出店しながら、麺類や汁物は社員食堂で提供する取り組みを行っており、受託先のニーズに幅広く対応するような運営を今後、他の受託先などでも取り入れていきたい。
ーー給食事業の売り上げ構成比は6割ですが、今後も柱として育成していきますか。
中西 もちろんメイン事業として維持したいのですが、外食事業の伸びが高いのが現実です。社員食堂は平均1ヵ所で月50~60万円の売り上げで、ボリュームはそれほど増えません。一方、『玉藤』など外食事業は1店舗で数千万円から億に近い売り上げが期待できます。外食事業の比率は現在4割ですが、この比率が徐々に上がっていくと思います。ただ、当社の財務状況を勘案すると、給食事業の比率を落としたくない。給食事業は設備投資が少なくて済み、投資先行型の外食事業と対照的。2つの事業をうまくマッチングして資金の回転を良好な状態にしておくことが望ましいので、給食事業の比率を現状のまま維持したいと考えています。