ーー震災後に取引先を回られての体感はいかがですか。
石井 震災翌週から北洋銀行では役員全員が取引先や被害があったところにお見舞いに回りました。その中で被災地の社会インフラの棄損はもちろんですが、あらゆる業種で影響を受けたと感じました。製造業は、商品の棄損によって損害が生じたところもずいぶんありますし、酪農関係の影響も大きかった。ただ、被害の額はそれぞれに違っても吸収できる企業は少なくないと思っています。そういう面では早期の復旧、景気全体の回復が期待できると思っています。
ーー震災でクローズアップされたのが地震保険ですが、北海道の企業は地震があまりなかったことから大半が入ってない状況です。
石井 特に今回強く意識したのは、BCP(事業継続計画)に対する取り組みをこれまで以上に強化していく必要があるということ。それぞれ取り組まれていたと思いますが、ブラックアウトまでを想定したBCPではなかったところが多かったのではないか。今後これを強化して、それぞれの企業活動の持続的な発展を常に念頭においた対応が必要になってくるのではないかと思っています。
ーー地方創生について、お伺いします。地方は人口減、少子高齢化が加速しており、徐々には(地方創生戦略が)進んでいますが厳しい状況です。
石井 私の感覚として当初の地方創生に関わる行政の勢いが低下しているのではないかと感じており危惧しています。とりわけ足元の経済力は、中央と地方の格差が拡大しつつあると思いますし、地方の人口減少が加速度的に進んでいますから、地方創生の取り組みは極めて重要であると思っています。
様々なデータを分析して域内で持続的な成長を遂げるための手段とか、域内自体が人口減少等でマーケットが縮小するのであれば域外で生き延びる、域外で競争力を高めていく取り組みが求められます。
北海道は広いので広域分散型になっています。道内の179の市町村が個々に地方創生に取り組むのではなく、広域連携による地方創生の取り組みが必要だと思います。それによる相乗効果を追求していくべきではないか。皆さん、それぞれやられていますが、連携してやるべきだと思います。
今、中空知地域では『中空知雇用プロジェクト』を広域連携で取り組んでいます。雇用不足がさまざまな業種で起きている中で、一緒に取り組もうと北門信用金庫、北洋銀行、北海道二十一世紀総合研究所、日本人材機構、北海道アルバイト情報社、各自治体など産学官で広域に取り組んでいます。働き手の不足は地域の共通課題ですから、このような取り組みが各地で必要になってくると思います。
ホテル旅館業においても人手不足は深刻です。その上、北海道のホテル旅館業は、生産性が低い課題もあります。そういったことを踏まえると、広域滞在型観光の推進で、稼ぐ力を強化していくためにも広域連携DMO(多様な関係者と協同しながら観光地域マーケティング、マネジメントを行う法人)のようなものが必要になってくるのではないか。
地方創生は観光と食というほぼ同じテーマになっていることが多いですが、広域で取り組んでいくことによって北海道自体の観光が長期滞在型に変わっていき、リピーターを創出する取り組みにつながっていくのではないか。
ーー中空知のケースはモデルケースでしょうね。なかなか全道的に広域連携が広がっていかないのは何がネックになっているのでしょう。広域連携を促進するためにはどのようなことが必要でしょうか。
石井 私ども民間が背中を押していくことをしなければなりませんし、ノウハウも提供しなければいけない。日本人材機構や求人企業と協力しながら進めることが必要ではないかと思います。1市町村単独でやっていくのはなかなか難しいと思いますし、実効性という面でも限界があると思います。
連関性を出していくべきで、それぞれの市町村の素晴らしさとか良さがあるので、独自性と連携を一緒にすることによって相乗効果が生まれてくるのではないか。