ーー道同友会の「北海道の未来検討ワーキング」で具体的に検討していることは何でしょうか。

 石井 足元で北海道が抱えている課題を整理してみると、一つは先ほど言ったように北海道の経済を牽引している観光があります。2020年には政府が訪日観光客を4000万人、道は独自に500万人という目標を掲げていますが、これを実現するためには二次交通や空港民営化を含めた総合交通体系の整備、宿泊業界、旅館業界における人手不足問題の解消、また観光業の付加価値を高めることも必要になってきます。観光先進地域といわれる沖縄と比べると付加価値はかなり低いですから。課題を克服しつつ長期滞在型観光にどうシフトしていくかも必要になってきます。北海道の観光を持続的に発展させていくためには、そういったことにしっかり取り組んでいく必要があると思います。

 一方で、北海道は広域分散型の生産になっていることから、生産性が低い課題があります。産業構造上でいうと第三次産業のウエートが非常に高い。道内GDPが18兆円でそのうち14兆円が第三次産業のサービス業。実に79%で全国平均から5ポイント以上高い。
 第二次産業、とりわけ製造業、ものづくり企業の生産額は1兆5980億円でGDP比8・6%、全国平均が18・6%なのでこちらは10ポイント低い。したがって経済の浮揚力が弱いという問題がありますし、雇用の問題も発生します。こういった産業構造上の課題というものにもしっかり取り組んでいく必要があります。
 電力について言えば、北海道は自然エネルギーが豊富な地区ですが自然エネルギーの全国シェアは9%と言われています。今後のベストミックスの動向を踏まえながら、電力問題についても考えていかなければならない。

 そういった様々な課題について横内前代表幹事が、未来検討ワーキングを作り今、精力的に取り組んでいるところです。従来のような提言から一歩踏み出して、精緻な客観的なデータをベースにして、具体的な対応策を探っていこうとワーキングを開催しているので、できれば来年の春過ぎぐらいに内容をオープンにしたいと考えています。
 ワーキングの座長は、小磯修二元釧路公立大学学長(一般社団法人地域研究工房代表理事)で幹事や正副代表幹事など20人ほどで定期的に議論しています。

 ーー成果発表は単なる提言にとどまらないものになりそうですね。

 石井 実際にどういう形にするか今検討していますが、ファクトベースに基づいた提言にもっていきたい。先ほど言いましたが、観光においては、沖縄と北海道での観光の付加価値額はかなり格差があります。これはなぜかというと、沖縄はリゾート施設が多いため長期滞在型で一人当たりの消費額が多く、フルシーズン型観光だからです。
 北海道はどうしても春先や秋から冬にかけての端境期があるので、設備投資や雇用拡大に踏み込めない構造的な課題があります。沖縄でも6月ころになると修学旅行生を呼び込んだり、ジューンブライドで結婚式のニーズを掘り起こすなど様々な取り組みをしています。北海道をフルシーズン型の観光地域にどうもっていくかの具体的提言もまとめたいですし、観光に限らず様々な分野で提言をしていきたい。

 ーー未来検討ワーキングは、北海道のポスト150年の羅針盤的な役割がありそうですね。

 石井 北海道命名150年という節目を迎え、次なるステージに向けてどうあるべきかという考え方で議論を進めていますが、当会は来年がちょうど設立70周年を迎えます。大きな節目を迎えるということで従来とは違う形で、北海道経済の持続的発展のためにどう貢献していくか、その役割を担うために未来検討ワーキングで様々な提言を出していきたいと考えています。
 北海道の経済同友会は、昭和24年の7月4日に設立されました。70年を経て当時の戦後再建という課題と質は違っても、北海道が置かれている状況は当時と同じように重たい課題を抱えていると思います。人口減少などは、今まで考えたこともない課題です。
 
 北海道ブランドがグローバルな視点で浸透してきている中で、抱えている構造的な課題もずいぶん多い。それらに前向きという言葉ではなく、私は真正面から取り組んでいきたい。一経済団体ということを乗り越えて、オール北海道で取り組めるようにしなければいけないですし、北海道の新たな展望を開けるような取り組みをしていきたいと思っています。

 ーー本日はどうもありがとうございました。



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