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 --モノレール開通は、2030年の新幹線開業に合わせるのが効果的ですね。

 西江 そうですね、できれば新幹線開業に合わせたいと思っています。新幹線駅建設に合わせてモノレール駅も作り、新幹線を降りたらすぐに乗り換えられるのが良いと思っています。路線は、花園経由で5~6㎞で国定公園の範囲には入らないようにします。倶知安駅から役場周辺までモノレールを延伸して、スキー場エリアと中心部の賑わいを繋ぐようなことも考えたい。

 また、新幹線駅から近いところに倶知安余市自動車専用道のインターチェンジが25年にはできます。全国の新幹線駅から自動車専用道のインターチェンジまでは平均2・3㎞と言われていますが、倶知安は新幹線駅から1㎞以内、時間にして3分以内で自動車専用道に乗降できるようにしたい。そうすれば、観光地により長く滞在でき消費拡大にも繋がります。

 --10年前と比べて倶知安の街はどう変化していますか。

 西江 2001年にアメリカで同時多発テロがありました。そのころ、倶知安地区のスキー客はバブル期に比べて半減状態でした。今後も減少すると言われていて、観光関係者や役場などが地域を挙げてどうお客を呼び込むか協議していた時期。同時多発テロが起こって、オーストラリアのスキー客らが、カナダやアメリカのスキーリゾートから安全、安心で雪質の良いニセコに来るようになりました。先駆者でもあるロス・フィンドレーさんらも旅行会社に切り替えを勧めてくれました。次第に口コミで海外からのスキー客が増え始め、その後は倍々で増えていきました。

 海外の人たちはホテルやペンションではなく、ゆったりできるコンドミニアムを切望したのでコンドミニアムの建設が進んでいきました。12~3月のシーズン稼働率は100%の状態だったため、ビジネスチャンスがあると国内外の投資家が次々とコンドミニアムを建てました。リーマンショックや東日本大震災があって客足が鈍り、投資も一時ストップしましたが、他のリゾート地と違ってコンドミニアムを持っているオーナーたちは富裕層。手放すオーナーはほとんどいなくて、値下がりもなく影響はありませんでした。

 --自然と開発を調和させていくことは不可欠です。どんな手だてをしてきましたか。

 西江 2005年ころに40階建てのコンドミニアムを建てる構想が浮上しました。それを契機に自然とマッチしたリゾート施設にすべきという議論になり、建ぺい率、容積率、高さ制限など準都市計画区域に指定して基準を設けました。ひらふ地区の道道より上の区域は高さ22m、傾斜地は最上階が18m以下に規制しています。22mというのは、この地域の木が成長した高さ。施設が木に隠れるくらいの高さにすることで景観を守っていくようにしています。
 
 高さ制限をすれば、海外の投資が呼び込めなくなると学識経験者に言われましたが、準都市計画区域の基準が決まった翌年から建築確認申請が多くなりました。海外の投資家たちは、ルールが定まったために投資がしやすくなったと受け止めたからです。リーマンショックの時は、一時様子見の期間がありましたが、翌年から投資は再び増え始めました。

 --法律に明記された基準以外にも自主的なルールもあるそうですね。

 西江 例えば賑やかなエリアにコンドミニアムを建てる場合、1階は商業施設にして飲食店や物販店に入ってもらうようにしています。準都市計画区域にして基準を決める時に、地域の皆さんたちで協議した自主ルールが今も生きています。
 そうして増えていったレストランには一流シェフが集まるようになりました。ひらふ地域の食のレベルは上がり、札幌に負けないくらいの腕を持つシェフが多くいます。その上、地域の一次産業が地元の飲食店に食材を提供する循環が出てきました。そこで食べた外国人観光客が自国に帰っても食べたいという需要が高まっていけば、食の海外展開も生まれてくるのではないでしょうか。まだまだ眠っていることがいっぱいありますから、協力して進めていこうと思っています。



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