(起業家や起業に携わる関係者約150人を前に講演する山本氏)
既存のインバウンドを受け入れていた店舗は、日本人観光客向けのドライブインや日本人向けの激安食べ放題店などで、売上げ不足を補填するために受け入れているところが多く、汗をかかずにリベートを払って集客している事例が多かった。買い物に至ってはインセンティブが高く支払われ、買いたいものを買うのではなくて売りたいものを買わされているのが実態だった。しかし、出来上がってしまった流れを変えるのは簡単ではなかった。
後発である私たちは、一生に一度となるお客様の体験に、適正な価格で適正な価値を提供し、透明性の高い日本観光を実現することを使命にした。インバウンドのニーズを最大限追求することによって口コミで添乗員や旅行会社を動かしていく。ユーザーが情報を自分で発信できるSNS時代だからこそ成し得たことで、私たちはこの手法で“袖の下文化”にイノベーションを起こした。
モノ消費からコト消費へと言われるが、体験型に変化していくインバウンドのニーズに合わせて、インタラクティブ(双方向)に食と音と映像を交えたお客様参加型のエンタテインメント・ビュッフェを目指していきたい。店舗にいるパフォーマーと名付けた店員が映像コンテンツとリアルを連結させる役割をしてお客様を異国文化の体験へ誘導する。そしてユーザーが直接情報を媒介することで口コミや映像がSNS上に拡散していくことになる。
これから私たちは日本の1億2000万人に対してだけでなく、アジア30億人をひとつの国と捉えて宿泊事業、レンタカー事業などに積極的に参入、日本の魅力を伝えるためのバリューチェーンを一気通貫してサービス提供する会社に向かっていきたい。そしてその先に、私たちは北海道、日本を海外に紹介するカルチャーのアウトバウンドに挑戦したいと考えている。来年から東アジアを中心に海外出店を加速する考えで、第1弾は、中国徐州市に建設される大型複合リゾート「晴朗谷(チンラングー)」に、“ほのかブランド”を展開する丸新岩寺(札幌市手稲区)とともに北海道と健康をテーマにした店舗面積約8000㎡の飲食施設付き温泉施設を2017年5月にオープンさせる。
この店舗自体がアンテナショップの機能を果たし、日本や北海道に触れあっていない人たちに魅力を伝えていく最前線基地にしたい。そして訪日外国人観光客の増加を後押しする好循環を生んでいきたいと考えている。今後、私たちはカルチャーやライフスタイルを輸出入する会社へと成長していきたいと願っている。
いま私たちがおもてなしをしているお客様が20年前の自分の姿と重なって見える時がある。あの時、私がヨーロッパ旅行で与えてもらったものを今度は私たちが提供する役割を担いたい。日本を訪れるすべての旅行者にとって人生に残る最高の思い出となるように、そしてアジアと日本の架け橋となれるように我々はこれからも走り続けていきたい。
(山本氏の受賞スピーチを本サイトが構成しました。)