道警の元総務部長の佐々木友善氏(66)が、道新記者が書いた書籍の表現で名誉を傷つけられたとして、道新記者と道新、さらにその書籍を出版した講談社と旬報社を相手取った控訴審が、7月1日に結審した。判決は、10月26日に行われる。
昨年4月、1審の札幌地裁では名誉毀損を部分的に認めたが、裁判費用は原告の佐々木氏側に9割支払うことを求めるなど、「佐々木さんの名誉は守られたが、経済的負担は佐々木さん側に過重で、実質的には五分五分の判決に近かった」とこの裁判をウォッチしてきたジャーナリストは言う。
両者共に控訴したものの、原告・被告共に新証拠はなく、むしろ被告側の主張が変遷するなど、ぶれた印象が残った口頭弁論が続いた。
7月1日の控訴審口頭弁論は、わずか10分で終了。被告側が求めた道警を訴えている道警OBを新たに証人申請したことについても、井上哲男裁判長は、「裁判所としては認証不用」と却下された。
この日は原告席に佐々木氏の代理人弁護士1人で、被告席には総勢13人の代理人や被告らが座った。いつもながらの光景だが、後ろ盾のない個人(佐々木氏)が、組織を相手に裁判を提起すると、物量では圧倒的に不利ということを物語るシーンを見せ付けた。
それにしても、被告席に着いていた道新記者2人は、道警裏金問題キャンペーンの中心記者だったが、現在の道新社内で置かれている状況は、当時と打って変わって辺境に追いやられているという。1人は運動部へ、そしてもう1人は役職なし、つまりヒラの整理部記者。
また、当時の取材班だった記者は転勤を機に辞職したという。取材班のメンバーは散り散りになり、道新社内では既に終わったこととして話題に上ることは殆どなくなっている。
佐々木氏が道警察総務部長時代から始まった道新報道への抗議から7年、佐々木氏が提訴してからも4年。
札幌高裁は、どんな判決を下すことになるのか。
(写真は佐々木友善氏)