まさに定刻の閉店だった。2025年1月13日午後7時、店長以下、従業員たちが深々と頭を下げると、集まったお客たちからは、拍手が沸きあがった。北海道進出から50年、道内最後の「イトーヨーカドーアリオ札幌店」は、ヨーカドーの流儀を貫いて閉店した。(写真は、買い物客で溢れるヨーカドーアリオ札幌店の最終日)
最終営業日の午後6時、大型商業施設「アリオ札幌」の1階にあるヨーカドーアリオ札幌店には、商品がほとんどない状態だった。空になった什器や冷ケースの多くには、紅白幕が掛けられていたが、次から次にお客が店内に入ってくる。用意されているのは、惣菜の1000円お楽しみ袋と刺身など、ごくわずか。それでも、そのコーナーには、多くの人が肩を寄せ合っていた。各レジには、長蛇の列ができ、係員が、「レジ最後尾」の立札を持って案内した。
午後6蒔15分頃から、店内には、「蛍の光」が流れ始めた。10数台あるレジが並んだお客を手際よく消化していき、次々とレジが稼働を終えていく。その頃から、売り場を取り囲むように人の輪が増えていった。スマートフォンで店内を写す人や、知り合いの店員と記念写真を撮る姿もあちこちで見られた。
午後6時50分、店内のライトが照度を落とし、最後の買い物を急ぐ人たちが、慌ててレジに駆け込む。同55分には、売り場の一角に店長以下、従業員が集まり、詰めかけた200人を超える人たちに向かって深々とお辞儀をすると、拍手が沸き上がった。午後7時、店長や従業員たちは、詰めかけた人たちに手を振り、最後の別れを惜しんだ。
イトーヨーカ堂が、道内店舗の撤退を表明してから11ヵ月、「アリオ札幌店」までに5店舗を閉店してきた。その経験が生きたというべきか、最終日までの商品の絞り方からレジ稼働台数の減らし方、最後の挨拶までの時間取りなどが、絶妙のタイミングで進行していった。そして迎えた午後7時、一点の曇りもない閉店のリアリティは、ヨーカドーの流儀を余すことなく伝えた。