豊月・豊岡雄次郎社長インタビュー「業態変更した生鮮市場2店舗が業績を牽引」

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 苫小牧市内や札幌圏で、「フードD」11店舗を展開している豊月(本社・苫小牧市)の新社長・COO(最高執行責任者)に豊岡雄次郎専務(55)が昇格して、8ヵ月が経過した。その間、既存2店舗を生鮮強化型スーパー「生鮮市場」業態に変更、この2店舗が牽引役になって、全体の売り上げも好調に推移している。豊岡社長に、「生鮮市場」業態を導入した狙いや今期業績について聞いた。〈とよおか・ゆうじろう〉…1969年5月生まれ、55歳、芦別市出身。故豊岡登一郎前会長の次男。札幌の大学卒業後にマルエツ入社、千葉県の店舗で青果売り場を担当。1994年に豊月入社。常務、専務を経て2024年4月に社長就任。現在も朝3時に起床して、苫小牧の市場で魚介類の仕入れを行っている。

 ーー社長就任から8ヵ月が経過しました。社長として、どのような会社を目指していますか。

 豊岡 私たちは、中小企業の食品スーパーですが、競争が激しい中で生き残っていかなければなりません。従業員によく言っているのは、三つの親切を大切にしようということです。一つは、お客さまに親切な会社、二つは取引先に親切な会社、そして三つは職員同士が親切な会社です。根本的にはそこが大切なので、三つの親切を実現する会社を目指しています。

 ーー2024年8月と10月に既存2店舗を改装して、「生鮮市場」にリニューアルしました。   

 豊岡 苫小牧市内の「澄川店」と「沼ノ端店」の2店舗をリニューアルして「生鮮市場」にしましたが、「澄川店」は前年比160%、「沼ノ端店」も同120%以上で伸びており、全11店の平均では、同108%で推移しています。

 ーー「生鮮市場」業態の特徴は何ですか。

 豊岡 生鮮3品と惣菜を強化した業態で、いわゆる生鮮4品の比率を55%以上にして、その売り上げを原資にグロサリー食品のEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)を実現していくのがコンセプトです。鶏もも肉の大容量の商品をエンドに集めるなど、「ロピア」の売り方も参考にしています。もっとも、当社には、「ロピア」にはない鮮魚という柱があります。鮮魚に次ぐ柱として、精肉を育てようとしています。「生鮮市場」業態は、その実証という意味合いもあります。量目の多様化とともにブランド牛の半額セールなどは、精肉部門での利益ミックスをしっかりと実行できているから実現できることです。

 ーー「生鮮市場」業態を導入した2店舗では、生鮮の伸び率はどのくらいですか。

 豊岡 精肉では、牛肉と鶏肉が伸びています。「澄川店」では、牛肉は前年比300%、鶏肉も同250%伸びています。同店では、「ロピア」よりも品質の良い鶏肉を、量目を落として売っています。鶏肉は、g128円で売っていたものを通常売値g88円で売っています。デリカでは、チキンカレーが大人気です。チキンが2枚入って698円の大きなサイズですが、いくら作っても間に合わないほど売れています。
「沼ノ端店」は、鮮魚が前年比140%、精肉が同120%、青果も同120%、惣菜は同130%となっています。買い上げ点数を上げるだけではだめで、売り上げを上げるためには、大容量の商品もしっかり品揃えしていかないといけません。

「生鮮市場」の2店舗では、精肉と惣菜の伸びしろが大きく、まだまだ伸びるでしょう。鮮魚はもともと強く、苫小牧以外からの直送ルートもあって、仕入れたものは、ほぼ売れています。「生鮮市場」業態にして一番成功したと思っているのは、ロスが少ないことです。どの部門もロスが少なくなって、回転率が、非常に高くなりました。

 ーー「生鮮市場」の業態が、成長の原動力になっていますね。

 豊岡 商品の回転率が高くなって、粗利も増えています。生鮮部門の店舗売り上げに占める構成比は、「澄川店」では、週末で60%までいっています。「澄川店」「沼ノ端店」「LISTA店」(江別市)で、生鮮の構成比を競い合っている状態です。「LISTA店」は、「生鮮市場」ほどではありませんが、鮮魚の売り上げ比率だげでも20~25%あります。あの店は、鮮魚でお客さまを呼んでいます。「沼ノ端店」の生鮮構成比は、これまでの45%から52%まで上昇しました。「澄川店」「沼ノ端店」ともに生鮮比率は、合格点だと考えています。

 ーー「沼ノ端店」の向かいには、「コープさっぽろぬまのはた店」が、2024年11月にオープンしました。

 豊岡 「沼ノ端店」を生鮮市場に転換した10月は、前年比150~170%の伸び率を記録しましたが、コープ店舗がオープンしてからは、同120%に伸び率は下がりました。「沼ノ端店」では、かなり販促を強化してきたので、それほど売り上げは落ちていません。お客さまが、グローサリー食品が安いということが分かってきています。業態変更の狙いは、そこが狙いでした。

 ーー2025年に、既存店を「生鮮市場」業態に変更する計画はありますか。

 豊岡 札幌市内の数店舗を「生鮮市場」にする予定です。老朽化している店舗を中心に検討しています。

 ーー2025年1月期決算の見通しは。

 豊岡 昨年度は、売上高140億円、経常利益1億7000万円で、売上高経常利益率は1・2%でした。今期は、売り上げは伸びますが、「澄川店」と「沼ノ端店」の改装投資と賃金のベースアップ、水道光熱費の上昇などがありましたから、増収減益となりそうです。(終わり)

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