「イトーヨーカドー」と「西友」の北海道撤退や新参スーパー「ロピア」の出店など、北海道のスーパー業界が、大きく変わろうとしている。2024年に生じた変化は、2025年に、幾重もの波となって、業界を揺らすことになるだろう。
リアルエコノミーは、新年恒例のアークス・横山清氏のインタビューを3日間にわたって掲載。社長から会長になってから初のインタビューとなったが、スーパー歴65年になろうとする、横山氏の暗黙知が零れ落ちるような話が、ふんだんにあった。2回目は、道内に初進出した「ロピア」の影響や北海道でもDS(ディスカウントストア)の地位を築いた「トライアル」、さらに道内スーパーの再編について聞いた。(写真は、インタビューに応えるアークス・横山清会長)
◆ロピアの北海道初出店
ヨーカ堂の北海道撤退、イオン北海道のGMS1極化、ロピアの参入など、2024年の北海道の流通業界は、変化のきっかけになる年だった。ロピアも頑張っているが、これからでしょう。あの物件は、2年前まで当社と交渉してきた経緯がある。その結果、私どもの力では、あの設備と条件では対応できないと判断した。今は、どうか知らないが、少なくとも5年レンジで考えると、まず、普通はなかなか大変ですよね。採算が合わなくても、トータルで繋いでやれないことはないでしょうけれど。
ロピアのやり方は、似て非なるものがある。それと、やはり、マスコミの使い方が天才的だ。非常にうまいし、ある意味でダイエーと似ていると感じている。過去の成功例を上手に使っている。ただ、他社のことだからあまり言っても仕方がないが、あの規模とあの内容で、九州、関西、東北、北海道と一気に出店しているだけでも大変ではないか。とりわけ、東北、北海道は、あれだけの超優等生、ヨーカ堂が手を余した空間を、埋めるだけでも大変だ。食品のフロアを安く使えるならいいですよ。私たちが交渉していた時に、向こうが提示したものからいうと、なかなかそうはいかないはず。コストを安くして条件を変えないと、あそこ(屯田)での商売は難しい。
アークスグループのラルズが展開しているロピアに近い「ビッグハウス太平店」は、今も2ケタ伸びている。ロピアに入れずに溢れた人たちが来ている。ロピアに対して安心はしていませんが、(松尾直人ラルズ社長が)よくやってくれている。
ロピアには、本州から来た幹部たちと、北海道で採用された人たちがいる。肉でも、本州と北海道では、食習慣が違うから、本州のような品揃えではなかなか難しいが、それらはすぐに直してくるだろう。ロピアが、4、5年の間に北海道を席巻するようなことがあるとすれば、私たちが眠っているということだ。
◆トライアルとどう戦うか
ロピアの影響が、道内スーパー業界に短期間で出てくるとすれば、むしろ歓迎する。ということは、無理をするから。無理をしたら続かないですよ。今一番、気をつけないといけないのは、トライアル。トライアルは、時間をかけて影響力を強めてきた。手法も、生鮮の本物に力を入れており、その効果も上がっている。店舗を見ればよくわかる。惣菜はたいしたものだ。そうしたことに加えて、株式を上場したことが大きい。上場益によって、今まで目一杯、つま先立っていた姿勢から踵(かかと)を下ろした。踵を下ろして余裕ができてきたのではないか。つま先立っているところは、なかなか踵を下ろせないものだが……。
◆道内3極以外の再編
イオン北海道、コープさっぽろ、アークスの3極以外の再編はあり得るだろう。これからですよ、資金と人間関係によって、再編の構図が決まっていくでしょう。私が個人として、大株主になっているスーパーがある。そのうちの1社とは、かなりの段階まできており、年明けに私の名前が出てくるかもしれない。ある大手流通グループの再編では、中間持ち株会社に関しても、噂では、私が一枚噛んでいるという話があるらしい。(次回に続く)