いつかは道内から姿を消すと思われていた「イトーヨーカドー」。その時期と承継先が、一部店舗を除いてきのう明らかになった。撤退時期は、2024年6月から2025年3月頃にかけて。食品売り場の承継先は、資本業務提携先のダイイチ(本社・帯広市)と「ロピア」を運営するOICグループ(同・川崎市幸区)。閉鎖店舗と承継先が決まっていない店舗もある。「イトーヨーカドー」撤退は、札幌圏スーパーマーケット業界に大混戦をもたらしそうだ。(写真は、「ロピア」が食品売り場を承継する「イトーヨーカドー屯田店」)

 イトーヨーカ堂(本社・東京都千代田区)の発表によると、札幌市内の承継先は、「屯田店」(北区)が2024年8月頃に「ロピア」、2025年1月頃に「琴似店」(西区)が「ロピア」、2025年3月頃に「アリオ札幌店」(東区)が「ダイイチ」となっている。「福住店」(豊平区)の承継先は決まっていない。既に発表しているように、2024年6月末に閉店する「帯広店」(帯広市)は「ダイイチ」に、「北見店」は同年8月末に承継せずに閉店する。

 イトーヨーカ堂は近年、「釧路店」(釧路市)や「旭川店」(旭川市)、「函館店」(函館市)などを閉店してきたが、いずれも承継先を決めないままの閉店だった。今回は、札幌市内の店舗が中心ということもあって、あらかじめ承継先を決め、雇用の維持や買い物客の利便性確保を優先した。

「イトーヨーカドー」は、道内スーパーマーケット業界の発展を牽引してきた役割を持っていた。多くの地場スーパー関係者は「ヨーカドーの食品売り場を見習え」を合言葉に、先進的だった売り場展開を取り入れていった。そんな時代は今や遠い彼方にいってしまい、「ヨーカドー、恐れるに足らず」が常態化していた。閉店モードが強まるにつれ、店舗は浮足立ち、戦略的にMD(販売政策)が展開できなくなるのは致し方がないところだった。

 多くの道内スーパー関係者は、ヨーカ堂は「ダイイチ」が一部店舗を承継するが、他の店舗は承継されずに閉店するとみていたようだ。しかし、ヨーカ堂は「ロピア」というディスカウントの雄を説き伏せた。「ダイイチの手の内は分かるが、ロピアは読めない。どう仕掛けてくるのか、2店舗とはいえ、業界は混戦状態になる可能性がある」と業界関係者。

 札幌圏スーパー業界は、局地的に激しい競争があるが、総じていえば「アークス」、「コープさっぽろ」、「イオン」の3強を中心に安定感がある。そこに「トライアル」などディスカウンターが攻め入ろうとしている状況だが、新たに「ロピア」が参入すれば3強の安定がぐらつく可能性もある。「イトーヨーカドー」撤退は、札幌圏食品スーパ―の大混戦への入り口となりそうだ。


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