2023年11月30日、新さっぽろエリアに誕生した商業施設「BiVi新さっぽろ」(札幌市厚別区厚別中央1条6丁目3-3)。2階に室内公園を設えたこの施設は、新さっぽろの新たな商業・コミュニティ文化を形成するインキュベーション装置の役割を持ちそう。「コープさっぽろ新さっぽろ店」は、この施設の1階に入った。(写真は、「BiVi新さっぽろ」1階にオープンした「コープさっぽろ新さっぽろ店」)
コープさっぽろ(本部・札幌市西区)は、札幌市内に28店舗を展開しているが、意外にも地下鉄駅に近い「駅チカ店舗」がない。郊外型の単独店舗がメインで、「新さっぽろ店」は初の駅チカ店舗となる。また、大型商業施設内へのインショップ展開も今回が初めて。市内29店舗目となる「新さっぽろ店」は、2つの初挑戦を内包しつつ、コープさっぽろの実力が試される店舗でもある。
新さっぽろ駅の地下コンコースには「BiVi新さっぽろ」1階に繋がる出入り口が新設され、2階には空中歩廊も整備されていてアクセスにストレスはない。館内は施設のコンセプトである緑とアートが各階に施されており、「新さっぽろ店」の正面入り口の柱にも、花や木々のアートが描かれている。店内の床は、スーパーマーケットではあまり見かけない、コンクリートの素材感を生かしたフロアとなっており、柱は木目調で統一されている。店内全体がブラウンとホワイトのツートーンで包まれ、各コーナーの食素材が映える空間になっている。
(写真は、「魚屋のお寿司」コーナー)
(写真は、初導入した惣菜・弁当が選べる「Select Deli」)
惣菜商品のおいしさと出来たてを追求した大惣菜化プロジェクト(農産、水産、畜産の各コーナーで販売している素材を利用した惣菜商品)をこの店舗でも導入したほか、新たな取り組みも始めた。洋食を中心とした食べきりサイズの惣菜や弁当を自由な組合わせで選べる「Select Deli(セレクトデリ)」、元有名ホテルの中華担当が監修する「幸富楼(コープロウ)」、海苔ごはんを使用して中身に具材を挟んだ「おにぎりバーガー」、ローストビーフを店内でスライスした「ローストビーフサラダ」などがそれだ。
(写真は、初導入の「おにぎりバーガー」)
(写真は、「亜麻仁の恵み牛」)
農産部門では「にんにく専門店」、「きのこ専門店」などをコーナー化、青果商品ごとに種類豊富に品揃えする「専門店」展開も始めた。畜産部門では亜麻仁由来の成分を飼料に配合して育てた「亜麻仁の恵み牛」や牧草のみで飼育した「グラスフェッド牛」のステーキなども扱っている。水産部門では、「魚屋のお寿司」や刺身を強化している。商圏には、独身単身世帯や共働き世帯、高齢世帯が分散していることから、大容量、小容量と量目範囲も広げた。
(写真は、青果コーナーにある「にんにく専門店」)
(写真は、オープン日の店内)
栗山貴史店長は、「地域の客層に合ったMD(販売政策)を取り入れていきたい。新さっぽろエリアでは後発のスーパーマーケットですが、他の店舗の長所や短所を見極めて斬り込んでいきたい」と話す。栗山氏は、一昨年11月にオープンした新店の「やまはな店」(札幌市中央区)の店長を経て、「新さっぽろ店」の店長に抜擢された。栗山氏は、「新店の店長は2回目なので、その経験を生かすとともにできなかったことにも挑戦したい」と闘志を見せる。
(写真は、柱に施されたアートが彩を添える「新さっぽろ店」の出入り口)
店舗面積は約303坪で、通常の「コープさっぽろ」店舗よりも小ぶりだ。コープさっぽろの近隣店舗は「ひばりが丘駅店」(厚別南1丁目9-1)のみで、新さっぽろエリアは空白地域だった。「新さっぽろ店」のオープン日には、組合員加入の手続きをするお客が大勢並んだ。「オープン時に、組合員加入手続きでこれだけの人が並ぶのは滅多にない」(広報)というように、地域住民の期待は大きい。駅チカ、商業施設内展開という2つの挑戦で成果を得れば、コープさっぽろの出店スタイルは多様性を増すことになる。
※本稿は、地下鉄駅コンコースと直結している店舗という定義で駅チカを使用しています。
※2023年12月4日記事一部訂正しました。栗山店長の前職は「やまはな店」の店長でした。お詫びして訂正いたします。