雪虫が舞う初冬の旭川で、巨大な建物の解体工事が進んでいる。大規模商業施設、「イオン旭川春光店」(旭川市春光町10番地)。解体工事は今年3月から始まり、今はわずかにコンクリートの躯体を残すだけ。やがてそれも取り壊され、辺りは雪に覆われる。この土地に雪が降り積もるのは、数十年ぶり。(写真は、「イオン旭川春光店」の解体工事)

 商業施設には多くの人が集まり、多くの声で賑わい、多くの出会いがある。地域に溶け込んだ商業施設は、周辺の住民にとって欠かせない存在。「イオン春光店」は、今から41年前の1981年7月、当時の北海道ニチイが「ニチイ旭川店」として開業した大型スーパー(GMS)がルーツ。敷地面積約7696坪(約2万5400㎡)、2階建て店舗の延べ床面積約6696坪(約2万2100㎡)、駐車台数が約750台という巨艦は、地域に圧倒的な存在感を放った。

 流通業界の再編に伴って、北海道ニチイと北海道地場のホクホーが合併、新生北海道ニチイが誕生。同社は1996年にマイカル北海道に社名変更、「ニチイ旭川店」は「春光サティ」に名称を変えた。以降、マイカル北海道は経営が悪化していたマイカルから資本面で離脱、2002年に社名をポスフールに変更したことに伴い、店舗名は「ポスフール春光店」に変わった。さらに、2003年にポスフールはイオンと資本業務提携、2007年には連結子会社になり、イオン北海道に社名変更、2011年に「イオン旭川春光店」の名称になった。

 店舗は生き物と言われるようにその時代、時代の世相を反映するが、店舗名が41年の間に4回も変わったのは、流通業界が絶えず変化していることの裏返しでもある。昨年9月、閉店が決まると店舗の外にある滑り台の話題が囁かれるようになった。そこで遊んだ人たちは、店舗と滑り台が幼い頃の思い出として刻まれていたのだろう。「イオン旭川春光店」が使命を終えたのは、2022年2月28日。最終日には多くの市民が別れを惜しんだ。

 雪解けの頃から始まった建物の解体工事は、夏、秋と続き、初冬を迎えた今、わずかに店舗の片鱗を残すだけになった。これから冬を越し、春を迎える頃、新たな息吹が聞こえてくるだろう。
(写真は、営業していた頃の「イオン旭川春光店」)
(写真は、店舗の外にあった滑り台)


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