ーーセコマが地域の産物を利用して地域にあるグループの工場で特徴ある産品を作っています。
大見 コープさっぽろは、セコマさんのそういう動きももちろん参考にしていきたい。15年ほど前と比較すると、北海道米はとても美味しくなりました。これは、地球温暖化の問題が少なからず影響しています。北海道の平均気温は、この15年ほどで1、2℃ぐらい上がっていて、コシヒカリの作付け最適気温が道央圏になっています。北海道米は、コシヒカリの交配種が中心だったので、新潟県米と同じぐらい品質が良くなりました。もちろん、農業試験場の品種改良の成果もあります。今や北海道はお米の品質ではナンバーワンの地域になりました。
同じことがブドウにも言えます。甲州ワインのブドウは現地では高温障害が出るようになってきました。ブドウのある品種については、道央圏が適作温度帯になっています。気温が1・数℃上昇したためにこうした状況が起きているのです。現在、道内には47のワイナリーがありますが、直近に設立された10ワイナリーのうち7ワイナリーは甲州から移ってきたものです。フランスのブドウを、北海道に持ってきても既に適作温度になっている品種もありますから、可能性は大きいですね。ワイナリーの数が60や70を超えるようになれば日本一のワイン産地になるでしょう。さらにワインに関して学術面から先端時な研究ができるような体制になっていけば、北海道のレベルは一歩違う次元の領域に踏み込むことが可能になり、フードツーリズムの価値がもう一段レベルアップします。北海道は、まさにそういうステージに入ろうとしています。
ーーコープさっぽろは、先駆的な取り組みをしていますね。『ホイリゲ北海道』や『畑でレストラン』はその代表例ではないでしょうか。
大見 『ホイリゲ北海道』は、8年ほど前からボージョレヌーボーの解禁日に合わせて、北海道のヌーボーワインを飲もうと始めたイベントです。『畑でレストラン』は、9年ほど前からイタリアのスローフード視察などを実施してきた中から生まれてきたものです。スペインのサンセバスチャンという美食の街がどうして誕生したかを探るツアーや南フランスのニース、マルセイユ、アヴィニョンの高い食文化のレベルを視察したりしてきました。そういう地域には、必ずファームレストランがあります。農業から6次産業化して“食べる”ことに特化したレストランで、地方の観光資源のレベルもすごく高い。
イタリアのスローフード調査の際に分かったことですが、ローマ郊外の海沿いの田舎町では月に1度、食のイベントが開かれています。街の人たちが集まって料理を楽しむイベントですが、田舎町なのでシェフがいません。どうするかというと、ローマからシェフたちが出張してその街にやってくるのです。その日のためだけに地元で採れた食材を使ってレストランを開いている。
コープさっぽろでは、2004年から消費者目線で第一次産業の生産者を応援する日本初のコンセプトの「コープさっぽろ農業賞」を実施してきました。これまでに130の生産者たちを表彰してきた実績があります。そうした農家の軒先に行って、旬の食材をその場で調理して出せばイタリアの田舎町で行われているイベントが北海道でもできるのではないかと考え、畑のど真ん中でレストランをやろうと始めたのです。
食で地域の活性化をどう図っていくかという問題意識を私たちは常に持っています。しかし、地方の食材を軸に、現地で特徴ある尖った料理を出す店はあまりありません。北海道には、馬鈴しょの産地はあっても、馬鈴しょを使った尖った料理を提供する地域はあまり聞きません。トウモロコシもそうです。素材はたくさんあっても、それを使った料理で有名な街はあまり多くないのが実態です。
素材はたくさんあるのだから、私たちが地方の民宿や小料理店に向けて馬鈴しょの画期的な料理を提案してくれるなら、1年分を差し上げますよ、などと提案しても良いわけです。カナダの東海岸の街ではそういった街おこしをしたところがあります。そうしたことが北海道でもできれば、新モノの馬鈴しょが取れた時はそれを使った美味しい料理を食べに行き、越冬した馬鈴しょを出荷する際にはそれを使った美味しい料理を食べに行くこともできるかもしれません。素材から料理まで、地域をスペシャライズすることによって、街おこしに繋がるというフレームワークです。そうした取り組みをしている地方は、北海道にはまだほとんどないのではないでしょうか。そういったことを含めて、コープさっぽろがお手伝いして地域の産業振興ができないかということです。