ーー流通業の枠を超えた新しい次元に入るようなイメージですね。

 大見 モノを届けるレベルの課題解決はいわば負の克服です。それは大方、解決の道筋がついたので、今度は地域にプラスオンをどうつくっていくかの視点です。地域にどう貢献していくかを考えようということです。

 ーーそれに向けたコープさっぽろの組織体制も見直しましたね。

 大見 今年度に入ってコープさっぽろの商品系4人、店舗系1人の部長職計5人を日本生協連の商品部に出向させました。経営破綻以降、20年来で5人の出向は初めて。宅配本部長だった八木沼隆さんは、コープ十勝出身ですが、現在は日生協に出向して宅配の事業を見ています。彼は、今年4月から日生協の執行役員(事業企画本部長)に就任しました。コープさっぽろに籍があるまま執行役員になった例は初めてです。
 日生協商品部に5人が出向して、コープさっぽろの高森雄輔さんを商品開発室の専属にしました。市町村との繋がりを持ちながら、日生協にどう繋いでいくかをこれから進めていきます。北海道の産品を、全国に広げていくお手伝いをしたい。一次素材を出すだけなく、商品化して全国に売っていくことができれば地域の産業振興にも繋がります。
 こうしたことができるようになったのは、コープさっぽろの商品開発などのレベルが上がってきたからです。スタッフの技術・能力の水準も上がって人的な余力も出てきました。それらを包括して次のステージを見据えようと地域の産業振興に踏み込んでいきます。道内で地域活性化の一翼を担う組織になっていかなければなりません。

 ーー最初に手掛ける地域振興の案件は決まっていますか。

 大見 現時点ではまた決まっていません。まず、市町村の工場を見て回ることから始めます。国の補助金が入った良い工場が市町村にはたくさんあります。そうした中には販路が開拓できておらず、稼働していない工場もあります。また、地域の工場で働く人が少ない問題もありますが、私たちはベトナム人の外国人技能実習生を約260人受け入れていますし、監理団体も自前化しています。市町村の労働力不足を解決できる手立てがあります。コープさっぽろのグループインフラを総動員して対応していこうと考えています。

 ーーところで、駅弁や仕出し弁当の「弁菜亭」ブランドの札幌駅立売商会(札幌市東区)をM&Aしましたが、その狙いは何でしょう。

 大見 「弁菜亭」は、駅弁が3割弱、仕出し事業が6割超の仕出し業者です。私たちは、店舗や宅配トドックの惣菜製造、病院や老健施設の給食事業、高齢者向け配食事業を行っていますが、仕出し事業はなかった。そのノウハウが「弁菜亭」にはあるので、グループで支援することにしました。今後は、仕入れの統合を図ってコスト競争力を強め「弁菜亭」の再生を図り、コープさっぽろの食事業との関連を深めてシナジー効果を出せるように取り組んでいきます。

 ーー店舗の新規出店が続いています。

 大見 4月の「しろいし中央店」(札幌市白石区)に続いて、「やまはな店」(同市中央区)も11月に出店します。中央区への出店は20数年ぶり。中央区にはかつて8店舗あったと記憶しています。小型店舗が多かったため、駐車場がないなどの理由で80年代後半に閉店が始まり、経営破綻した時に1店舗を残していずれも閉店しました。中央区の組合員は、市電撤廃問題が起きた70年頃には反対運動を巻き起こすなど熱心な組合員が一番多い地域です。経営が安定してからは、毎年の総代会で中央区組合員から出店要望がありました。ようやくそのことにお応えすることができます。
「やまはな店」は、19年10月に建て替えた「中の島店」と同じ400坪2層の店舗で、生鮮食品とデリカの強い店を目指します。2階には良品計画(本社・東京都豊島区)の「無印良品」が入る予定です。今後の新店はケースバイケースですが、「無印良品」とコラボしていきたい。コープさっぽろと「無印良品」の客層はマッチするのではないかと考えています。年に2店舗は出店していく考えで、22年度までにスクラップ&ビルドを含めて6店舗を出店します。

 ーーサツドラホールティングス(HD、本社・札幌市東区)との連携は、具体的にどう進んでいますか。

 大見 年内に食品系とドラッグ系の仕入れを統合します。食品系は、加藤産業(本社・兵庫県西宮市)がメインになりますが、コープさっぽろも加藤産業が食品系のメイン卸なので、コープさっぽろの帳合に合わせて形成します。ドラッグ系はPALTAC(同・大阪市中央区)を中心にしてサツドラHDの帳合に基づいて行います。北広島・大曲のサツドラの物流センター業務は、コープさっぽろグループの北海道ロジサービス(同・江別市)が行う予定になっています。
 
 ーー本日はありがとうございました。
※2021年5月13日記事一部修正しました。



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