コープさっぽろ(本部・札幌市西区)は、北海道の自治体が抱える買い物難民や高齢者のひとり暮らしなど、食に関わる課題解決を3年間かけて行ってきた。これらの取り組みが一定の成果を得ていることから、今年度から地域の持続的成長を後押しする地域振興に本腰を入れることにした。「北海道の食のインフラ」を担う組織として、製造、物流、販路の機能をフルに活用して地域経済の活性化に寄与する。地域とどう向き合っていくのか、大見英明理事長にインタビューした。(写真は、インタビューに応じるコープさっぽろ・大見英明理事長)
ーーコープさっぽろは、これまで道内各地域の食に関わる支援を行ってきました。
大見 2018年に「地域政策室」を設置して、中島則裕専務理事が筆頭になり道庁、市町村から2人の出向者を受け入れて179市町村を3年間かけて回りました。市町村の買い物難民の問題や高齢者のひとり暮らしをどう支えるかなど、過疎化の中で主として食とどう取り組むかを検討してきました。
例えば、島牧郡島牧村の保育園で、食材調達に苦慮しているという相談がありました。そこで、コープさっぽろの宅配トドックの配達を週1回から週2回に増やし、食材調達や支援の応援をさせていただいた。道内の人口5000人以下の自治体では、行政が食のインフラを維持することが難しくなってきています。そうしたことの側面支援としてコープさっぽろは市町村と提携しながら、移動販売車を増やしたり、宅配トドックの取り扱い品目を2万SKU(在庫保管単位)まで広げたりして対応してきました。2万SKUというのは、大型スーパーと同じくらいの品揃えです。そのクルマが週1回、利用者の玄関まで行くというレベルにまでなっています。満足度が上がり、利用度も上がっています。コロナ禍で、利用者は昨年度で3万人ほど増え、取扱額も20%ぐらい伸びています。今年度に入っても利用は落ちていません。
3年間経過して買い物難民の支援は、ほぼ全道で対応できる環境が整いました。では、次に北海道で大切な問題は何かと考えると、それは地域の産業振興です。食を通して地域の産業を振興し、雇用の場も創出していくことが私たちコープさっぽろの使命ではないかと思い至ったわけです。
各市町村にある食品工場などを調べてみると、自治体が3セク形式で食品工場を持っている例がいくつもありました。そういうところは、販路がなかったりして思うように稼働していないところがあります。そういった面のフォローを私たちがやっていけないだろうかと。地方にある自治体が関係する食品工場で商品開発や食材供給、販路のお手伝いができないかということです。
ーー今までは地域の課題解決を支援してきましたが、これからはギアを変えて、地域振興支援に舵を切ろうということですね。
大見 買い物難民の解決には一定程度道筋がつき、次は地域の産業振興にどう向き合うかです。モデルとしてイタリアの生協があります。彼らの食分野でのシェアはイタリア全土で15%ほどあって、最大の小売りチェーンです。各州にある基幹生協が作っている産品が、全国ブランドとして流通しています。オリーブオイルメーカー、チーズ工場、ワインメーカーなどそれぞれのエリアで得意な産品を作って生協がコープ商品として全国に供給している。これは、イタリアモデルとも言えるものです。
日本の生活協同組合連合会は東京に本部がありますが、私たち北海道の生協が作った地域の産品を、日本生協連を通じて全国に販売することも将来的な方向性としてあっても良いと思います。各市町村が持っている食品製造の工場などをどこまで活用できるかを調査しながら、コープさっぽろとして支援できる体制を模索して北海道の各地域の産品を全国に販売していく流れをつくる一助になればと考えています。