組合員数180万人、世帯加入率65%と北海道で圧倒的基盤を持つコープさっぽろ(本部・札幌市西区)。そうした強みは全道全域での食インフラ構築に生かされているが、店舗事業ではまだ伸び代(しろ)がある。店舗活性化に近道はない。地道にコツコツと試行錯誤を経て「これは」と思えるものを自ら掴み積み上げていくしかない。大見英明理事長に店舗事業活性化について聞いた。(写真は、大見英明理事長)

「2019年1~12月の店舗売り上げは、前年同期間比約97%。12月の最終21日~31日は99%までいった。さらに際(きわ)の28日~31日は105%まで伸びて健闘した。ハレの日に強いのはコープさっぽろの特徴だったが、それが強みにならなくなってきた。2020年は反転攻勢を掛けないとダメだと思っているが単純なことではない」

「1人世帯の増加は我々の想像以上だ。昨年10月に建て替えた『なかのしま店』の500m商圏には1人暮らし世帯が58%を占めている。従来通りのMD(販売政策)で営業しても予定通りの売り上げがいかない状況になっている。家族構成や生活慣習の急速な変化にスーパーがしっかりと対応できていない。こちらの問題が大きいと思っている。このことに対応して順番に店舗を変えていくが、非常に地道な取り組みになるだろう」

「コープさっぽろは60歳以上のシニア層の支持率が高いが、こうしたシニア層も夫婦2人世帯から1人世帯になったりしている。1人世帯ということでは若年層が結婚をせず独身を続けるケースも増えている。1人世帯がシニア層と若年層の両面で増えている。この傾向はますます高まってくるだろう。シニア層のウエートが高かった分、コープさっぽろへの影響は大きいかもしれない」

「専業主婦がこの20年で激減、女性が働きに出ている率が圧倒的に増えており家で食事を作る時間も少なくなってきている。こうしたニーズに対応した店舗での即食簡便、調理時間削減といったアプローチも弱かった。それらに対する積み上げ型の努力を商品関連で実践していかなければ、市場からはじき出されるくらいの危機意識を持っている。そのことにしっかりコツコツと取り組んでいく」

「商品構成や量目についても1人世帯に対応したものを増やし、即食簡便商品の品目数も増やしていかなければならない。それには、バックヤードなど店舗内作業の労力もかかる。現場作業をどれだけ減らすかを同時にやらないとできない課題だ。そういうジレンマの中で現場力をどこまで引き上げられるか。現場力を上げるために本部は現場作業改善の仕掛けをつくることが重要になってくる」

「新規店舗は20年中に札幌市内で1店舗を出店する。リニューアルは継続して実施、閉店店舗は現在検討中。新規出店を予定している『とくら店』(函館市戸倉町)は出店を延期する可能性がある。店舗の営業力をもう一段上げないと、競合が多い地域では店舗が出せる状況ではないと考えている」

「小売業にとって縮小均衡は従業員のモチベーション維持がなかなか難しい。ある程度は(出店など)攻める姿勢を継続しないと全体の盛り上がりが保てない。19年は店舗事業のコスト改善を柱にしたことで競合スーパーの攻めを許してしまった。いずれにしても今後2年で店舗事業の構造改革を行っていく」(続く)


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