釧路市にとって「まさか」の話だろう。イトーヨーカ堂(本社・東京都千代田区)が、「イトーヨーカドー釧路店」の閉鎖を検討していることについてだ。同社と釧路市は3年前に連携協定を締結したばかり。撤退が現実になれば、協定自体が宙に浮く。(写真は、イトーヨーカドー釧路店)
ヨーカ堂が2015年9月に発表した事業構造改革。21年2月末までに販売不振の全国40店舗の閉鎖を明らかにしたが、その時点で道内11店舗のうち複数店舗の閉鎖が取り沙汰された。釧路店もその1つとみられていた。
ただ、同社は事業構造改革発表の1ヵ月前に市と地場産品の販路拡大、地産地消で連携協定を締結。ショッピングセンター2ヵ所を釧路圏内に構えるイオンではなく、1ヵ所しか店舗のない同店との個別協定に踏み切ったのだ。
協定の中身は、釧路産の生鮮品を中心に農産・畜産・酪農・加工品など幅広くPRするほか、釧路のスイーツや軽食が楽しめるよう1階に無料休憩スペース「ジョイカフェくしろ」を開設、セブンカフェや地元有名店のスイーツ、ご当地サバサンドの軽食も販売することなど。
また地場素材を生かした惣菜や寿司、弁当の開発を進め、ネットスーパーの会員に向けて釧路産品をPR、釧路店が全国に先駆けてネットスーパーご当地便としてスタートするなど全国的にも注目される協定だった。
協定に基づいた活動も展開されてきた中での「閉鎖」が現実になれば、市の経済政策にも支障を与える。ヨーカ堂は店舗のある函館市や旭川市、帯広市、北見市などとも連携協定を結んでいる。「連携協定」の目的と意義が改めて問われる。