2016年1月、「シュレン国分」と「国分北海道支社」が統合して「国分北海道」が誕生した。全国をカバーする国分グループの機能と地域に密着した食品卸という機能を両立させた北海道の企業として新たにスタートを切った。道内の流通業界は寡占化が進む一方で、高齢化や人口減少が全国で最も速いペースで進み市場の縮小は避けられない。国分北海道は、食品卸としてどう成長戦略を描いているのか、社長に就任した黒澤良一氏に聞いた。
(くろさわ・りょういち)1957年生まれ、千葉県君津市出身。学習院大卒、82年国分入社。最初の赴任地が札幌。その後東京勤務となったが再び札幌に戻り北海道支社第一支店長を経て中国支社副支社長、東北支社副部長、2015年1月に北海道支社長兼シュレン国分社長。16年1月国分北海道社長就任。札幌勤務は通算25年になる。北海道の流通事情の変化をつぶさに見てきた。
――今年1月、新会社「国分北海道」がスタートしました。あらためて狙いを聞かせてください。
黒澤 国分グループは、今年1月に全国に7つの地域会社と2つの低温の会社を設立して分社化しましたが、実は北海道が先行モデルなのです。2009年に旭川や函館にあった地域の国分子会社と北酒連が合併して「シュレン国分」を設立しました。その結果、統合効果が大きく出ました。売上げ自体は、道内流通が寡占化されていることもあってそれほどの伸びはありませんでしたが、利益面での貢献が大きかった。それが国分の成功事例になって全国のエリア別に分社化を進めることになった訳です。北海道は、「国分北海道支社」と「シュレン国分」が合併して「国分北海道」となりました。ただ、09年以降に一度統合効果が出ているので、「国分北海道」には数字面での効果はそれほど出てきません。
――北海道の統合効果は、売上高というより組織運営面に出てくる訳ですね。
黒澤 当社と取引のあるメーカー様や得意先様からすると、これまで私は「シュレン国分社長」であり「国分北海道支社長」という2つの顔がありました。何が違うのかと思われる方がたくさんいたと思う。実態はひとつの会社のように動いていましたが、2枚の名刺を持っていました。今回、名実ともにひとつの会社になりシンプルで分かり易くなりました。メーカー様や得意先様との距離は一段と近くなるメリットがあります。「国分北海道」が誕生したことによって、本社が東京の全国卸の出先ではなくなりました。文字通り北海道の会社としてどれだけ北海道に貢献できるか、それが大きなテーマになります。
――出先ではなくて本社であるということで社員のマインドも違ってきますね。
黒澤 かなり変わってくるのではないでしょうか。当社の売上高は、約1030億円(2015年12月期)で道内企業としては金融機関を除けば30位以内の規模。道内では大手企業の一角を占めることになります。
――国分グループは、2020年度を最終年とする5ヵ年計画(第10次経営計画)を策定しましたが、それに合わせて各地域会社も経営計画を立てました。国分北海道の計画を教えてください。
黒澤 数値目標は具体的にオープンにしていませんが、2020年に在りたい姿として個人的には売上高1200億円を目指したい。この数字は、シュレン国分の設立時とほぼ変わらないのですが、道内の市場全体を考えると高齢化や人口減少などで大きな伸びは見込めません。着実に伸ばしていく考えです。
――売上高を伸ばすための戦略は如何ですか。
黒澤 北海道の流通業界は、アークス様、イオン様、コープさっぽろ様、セブン&アイ・ホールディングス様の4極にプラスして農協系1極という寡占状態にあります。これら「4+1」の中で当社が取引をしているグループとは少しずつでも売上げを増やしていきたい。また、殆ど取引のないところもあるので国分北海道として、常にそばにいてお役に立つことをアピール、取引を増やしていくようにしたい。
当社は、地域密着の全国卸という強みを積極的に活用していきます。全国卸の機能を持って地元に根差し、大手小売業様から酒販店様までカバー、どの小売業にもきちんと対応していきます。「商社」ではなく「問屋」として生活者がいる限りに商品を届けていくことに変わりはありません。それこそが「問屋」として卸売業がやるべきことだと思っています。確かに地方配送にはコストがかかりますが、コストが吸収できてそれなりの利益があればきちんと全道カバーの体制は堅持します。
「国分北海道」黒澤良一社長に聞く 地域密着の全国卸として大手小売業から酒販店までフルカバー
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