道内食品スーパー、マックスバリュ北海道の創業者である出戸一成相談役(75)ら創業家の3人は、保有する同社株35万株を7月20日付けでイオンに売却した。
出戸相談役と夫人の京子さん、長男の信成氏(同社取締役)が保有する同社株は62万1千株で発行済み株式数の9・07%。今回売却したのは3氏合わせて35万株で、これによって創業者ら3人が保有する株数は27万1千株と3%程度に低下する。
逆にイオンの同社株保有数は59・7%から64・8%に増える。
マックスバリュ北海道の前身は札幌フードセンターで、道内食品スーパー勃興期の1961年に現相談役の一成氏が創業した。一成氏は小樽に本拠を置く海産物商の3代目。中央大卒業後は、家業を継ぎ最初は支店のあった稚内で働き始めたという。
ニシンの激減など海産物商の将来性に疑問を持ち、新たな事業としてスーパーに参入、それが札幌フードセンターの出発点になった。当時、一成氏は25歳という若さだった。
1号店は札幌市北区の北24条店でセルフサービス方式を採用、狭い店舗は来店客で常に混雑していたという。2号店は札幌市中央区の円山店。店舗と住宅を兼ねており、長男の信成氏はここで家族の仕事を間近に見て育った。
93年にジャスコ(現イオン)と資本・業務提携を結び、95年9月には当時の店頭登録市場(現ジャスダック)に株式を公開している。
2000年10月、ジャスコが道内で展開を始めていた食品スーパーの北海道ジャスコと合併してマックスバリュ北海道に社名変更。今年は10年の節目の年になる。
食品スーパー業界は現在、消費低迷や価格下落で消耗戦を続けており、業界内ではマックスバリュ北海道の地位低下を懸念する声が高まっていた。
かつては、『品質の札幌フード』と呼ばれたが、商品力など店舗の魅力が薄れ、アークスが展開する『ビッグハウス』『スーパーアークス』やコープさっぽろの店舗に大きく水を開けられている。
今回、出戸一成相談役ら創業家3人が株を放出したのは、イオン側からの要請によるもの。スーパー業界では、「いよいよイオンが道内流通業の大改革をするのだろう。場合によったら、GMS(大規模小売店舗=総合スーパー)のイオン北海道とSM(食品スーパー)のマックスバリュ北海道を合併させて一本化することも十分考えられる」という声も上がっている。
イオンが背水の陣で道内流通の整理に乗り出したサインと見るのが正解だろう。
(写真は創業当時の札幌フードセンター北24条店)