「地道に積み上げる」北雄ラッキー桐生宇優社長が自社スーパー像を語る

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 北雄ラッキー(本社・札幌市手稲区)の社長に桐生宇優(ひろまさ)取締役(49)が就任して5ヵ月が経過した。創業者、桐生泰夫会長(78)のジュニアとして営業、販売、管理の各分野で経験を積んだうえでの登板だ。食品スーパーはグループ化が進む一方で、どの資本系列にも属さず独立自尊を貫こうとする企業もある。北雄ラッキーは後者の最右翼だ。新社長として気負いのとれたこの時期を選び桐生社長を直撃した。IMG_6330(写真は、北雄ラッキー桐生宇優社長)
 
 ――社長就任から5ヵ月が経ちました。食品スーパーの資本業務提携や株式交換による子会社化などが進む中で単一資本の独立系ローカルスーパーとして展開されていますが、今回のインタビューでは様々な角度から御社の戦略について質問させていただきます。まず、利益率について。食品スーパーとして売上高経常利益率の改善が不可欠だと思いますが…。
 
 桐生 店舗でのLED導入や北電以外の新電力会社から電力を購入する比率を高めてコスト高を是正する動きをしていますが、当社の場合、人件費コストがほかのディスカウントではない食生活提案型のスーパーと比較すると1~2ポイント高い。これを改善するだけで業界平均の経常利益が出ると思います。
 
 ――そこが一番大きな改善ポイントということですね。どのように人件費コストを下げようとお考えですか。
 
 桐生 次の中期3ヵ年計画の中でセンター化の比率を高めることや、物流センターの建設構想などがあります。それらによって業務改善してコストを下げます。札幌市内にある当社の低温センターでは精肉と魚を加工していますが、もう少し供給率を高め店舗の作業を効率化します。惣菜センターもあるので1次加工、もしくはパッケージに関しての能力をどう高めていくかが次の3ヵ年計画の中で重要な柱を占めます。
 
 ――惣菜や精肉などの大型のセンターを建設する構想はありますか。
 
 桐生 どれがベストな形なのか、既存の施設を使ってできるのか、もしくはどこかの施設を借りてやったほうがいいのか、現在、計画している最中です。
 
 ――人件費は他のスーパーに比べて1~2ポイント高いということですが、どのくらいが目標値ですか。
 
 桐生 本来、スーパーマーケットは1億円の売り上げで1人という考えです。例えば当社の場合、420億の売り上げがあれば420人いれば本部機能も含めて回って行くのが業界の標準だと思います。当社は500人を超えています。しかしリストラするつもりは一切ありませんので、ベースとなる売上げを少しずつ伸ばしていくことと、効率化をしっかりやっていくということで対応していきます。
 
 ――店舗でのオペレーションコストを下げていくのも重要ですが、7月にオープンした「シティマートくんねっぷ店」(常呂郡訓子府町)はそのモデル店ですね。
 
 桐生 「くんねっぷ店」では、お話したセンター構想の内容とは別に「マルチジョブ」と言って部門の垣根をなくし、店全体のオペレーションを管理する方法を採用しています。例えば、他の企業では日配商品は朝仕入れをして、開店前に並べる日配部門のスタッフがいますが、この店では商品を並べ終わったらそのまま10時開店とともにレジに入るといったように、2部門、3部門を掛け持ちのような形でオペレーションが組めるかどうかを構築している最中です。現在も各店舗で改善して実施しているのですが、「くんねっぷ店」はまっさらの状態からスタートできる店ですから、モデル店として始めています。
  
 ――オペレーションコストの低減と固定費低減で経常利益率をどの程度に持っていきますか。
 
 桐生 北海道は競争が激しいので、理想は売上高経常利益率2%オーバーですが、まず1%を確実にとり、それだけでは競争力がないので1・5%までは上げていきたい。最終的には2%オーバーであれば安定して運営でき単独で充分に戦って行けるのではないでしょうか。
 
 ――ほかに実行しなければならない課題は何でしょう。
 
 桐生 スーパーマーケットというのは、これまで商品さえあれば売れる時代が続いていましたが、今は完全にマーケットをきちっと意識しなければ売れない時代になっています。以前ならトップダウンで売上げを伸ばすことができましたが、今は現場のマーケットを知っている人がしっかり売りに結びつけるような売場をつくっていかなければ伸びなくなってきている。どこのスーパーでもトップダウンで動いていた時代が長いので、そのような体質になっていると思いますが、いかに現場の判断能力を高めていくかが重要な課題だと思っています。
 
 ――そうした現場力を高めていくためのやり方、ツールなどは何か考えていらっしゃいますか。
 
 桐生 最終的には売場と売り方を知っているのは、店舗にいるそれぞれの部門の責任者だと思いますが、それぞれで考えて欲しいと言うだけではうまくいかない。まずは上からだと考え、営業本部の部長たちの権限強化を図りました。部長たちが持っている決裁権限で、営業でやろうと思っていることを強力に進められる組織運営にしたのです。それが浸透した後に来年度の方針の中で、例えば店長やバイヤークラスがしっかり考えて行動でき決定していける組織にしたい。その次の年には現場のチーフたちにもそれが浸透するようにと、まずは上から変えて行こうと考えています。要はそれぞれの責任と権限を明確にすることと縦割りなってしまうと困るので、横でのコミュニケーションを図れるような運営をしていきたい。そこが一番難しいですが、やり切れば一番強い会社になれるのではないでしょうか。
 
 私は方針をしっかり立てて、部長・スタッフが動きやすい潤滑剤のような役目をします。商品政策にしても販売政策にしてもブレることは絶対しないように、しっかりした意思を持って指示します。戦術は現場の力を最大限に発揮できるような形に持っていければいいのかなと考えています。
 

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