流通は暗黒大陸と言ったのは社会学者のドラッカーだが、まさに暗黒大陸そのものの動きが道内流通業界で繰り広げられている。
暗黒大陸と言うのは、例えば商品が店頭に並ぶまでにどういう流通経路を通ってどう値段が変わっていくかが全く見えないことを比喩的に言い表したものだが、流通業界のM&A(企業の合併・買収)も商品と同様、どこがどうM&Aに動いているのかが全く見えない。
道内流通業界でM&Aの仕掛け人的企業になっているのが、アークスとコープさっぽろ。昨年、アークスが札幌東急ストアを電撃的に買収すると、すかさずコープさっぽろも旭友ストアーの店舗を賃借することを決めるなど、両雄のM&A合戦は道内を席巻している。
流通業界の関係者は、こうした現象を、「北海道を舞台にウルトラマンとバルタン星人が戦いを繰り広げているようなものだ」と述べていた。どちらがウルトラマンでどちらがバルタン星人なのかは分からないが―。
アークスは上場企業として成長路線は避けて通れないし、コープさっぽろも450億円にのぼる累積欠損金を解消するためには規模拡大による利益確保が避けて通れない。このため、両雄のM&A合戦はますます激しくなってくるのは間違いない。
例えば、コープさっぽろは、アークスが入っている商品の共同仕入れ機構である北海道CGCの盟友、北雄ラッキーにも声をかけているし、マックスバリュ北海道の身売り話もアークス、コープさっぽろの両方に持ち込まれたようだ。
さらに西友の株主である米ウォルマートも西友の道内店舗の売却をそれぞれに持ち掛けているという。
道内流通界で今年最大のM&Aになるのでは、と見られているのがホクレン系の食品スーパーの行方。同じ協同組合ながら仲が良くないというコープさっぽろとホクレン、系統組織と商系組織の溝のように距離のあるアークスとホクレン。
しかし、流通業界は暗黒大陸、どこがどう話を進めているのかは蓋を開けてみなければわからない。アークスとコープさっぽろのM&Aという選択もゼロとは言い切れない。秋口に掛けてびっくりするM&Aが飛び出すことは、流通業界を取り巻く環境を考えれば必定のように見える。
(写真は6月4日に札幌教育文化会館で行われたコープさっぽろの第45回の総代会)