イオンが首都圏で食品スーパー再編を打ち出したが、業界にとっては2つの意味でエポックになる再編劇になりそうだ。一つはイオンがこれまでの個別企業への資本参加というグループ会社方式から持ち株会社方式で再編を打ち出したこと、もう一つは「1兆円」が将来的な食品スーパー生き残りのラインに設定されたことだ。イオン主導の首都圏再編は、食品スーパー業界にとって、“イオンショック”とも呼べるものでセブン&アイ・ホールディングスや持ち株会社方式で先行するアークスにも影響を及ぼしそうだ。
 
 
 イオンが首都圏で展開する食品スーパーは100%出資のマックスバリュ関東と資本参加しているマルエツ、カスミの3社。マルエツ、カスミへの出資比率は3割程度でイオン化というよりも従来のマルエツ色、カスミ色を活かした緩やかな連携だった。スーパー業界を取り巻く環境は厳しく、人口減少や競争激化で3社の利益率を上げるためには、抜本的な組み換え策が必要だった。
 
 効率を求めるには合併が最善と見られるが、食品スーパーは各地域の食文化に沿った地域密着展開が必要となるため屋号や仕入れルートの統一という効率一辺倒では消費者の満足度を得られない。イオンは、首都圏という地域を区切った持ち株会社を設立することで地域ローカルの良さを残した食品スーパー再編で経営効率化を図る抜本組み換えを進めることにしたようだ。
 
 持ち株会社方式で先行しているのはアークス。横山清社長は、八ヶ岳連峰経営を標榜し地元北海道や北東北で経営統合を重ねてきた。イオンが今回、首都圏再編の手法として持ち株会社方式を取れ入れることにしたのはアークスの成功があったことは否めない。アークスは設立12年を迎え、デフレ時代の中でも成長路線をひた走ってきた。
 
イオンが2015年に設立する持ち株会社「首都圏スーパーマーケット連合」の売上高は約6000億円になり、業界ではライフコーポレーションを抜き1位になる。6年後には売上高1兆円を目指すという。これによって、食品スーパー業界は1兆円が将来に亘る生き残りラインになりそうだ。
 
 アークスは今年9月に岩手県盛岡市本拠のベルグループを経営統合し16年2月期には5000億円を超えることが確実。横山社長は「5000億円の次は1兆円を目指す」と語っており、イオンの食品スーパー再編が刺激になって、かねて想定されているアークスとライフの経営統合がより現実味を帯びてきた。イオンとアークスのどちらが1兆円突破を実現するかも関心を呼ぶことになりそうだ。
 
 地場ローカルスーパーが手を携えることによってアークス的な手法で首都圏アークス、西日本アークスをそれぞれ1兆円規模で設立する機運も高まってきそう。イオンも首都圏以外の中部や西日本でもグループの食品スーパーを束ねた持ち株会社による再編を進めて行く可能性が高まってきた。
 
 セブン&アイ・HDも傘下グループ食品スーパーのヨークベニマル、ダイイチ、近商ストア、天満屋ストアといった列島縦断型展開に変化が出てくるかどうか注目される。


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