全国商工会連合会の主催で「農商工連携マッチングフェアin札幌」が20日、ホテル札幌ガーデンパレスで行われた。1次産業と2次産業、3次産業を結合させて付加価値を伴った新製品を生み出し、売上増や地域振興に役立てようというフェア。事例発表として三笠市の鶏肉生産者と農業者が生み出した鶏の醤油を使ったドレッシング開発の経緯について講演、農商工連携のポイントについて明らかにした。(写真は、講演する中央食鶏の大西悠紀彦顧問と玉ねぎドレッシング)
講演したのは、三笠市の鶏肉生産業者である中央食鶏の大西悠紀彦顧問と同じく三笠市で玉ねぎを生産している渡辺農場の渡辺辰一代表取締役。
中央食鶏では廃棄物として捨てていた鶏の内臓を利用して2年半前に醸造発酵法を使って鶏の醤油、「鶏醤」を開発。世界で初の動物性醤油で天然アミノ酸が通常の醤油に比べて6~7倍、うま味成分も高く含まれている低カロリー製品ということで期待されたが、価格が通常の醤油に比べて4~6倍と高く冷蔵扱いのため市場の広がりが限定されていた。
大西氏は鶏醤をベースに付加価値を高めるために農業とのマッチングを指向。「最初に三笠市農協に出向いたが、当時三笠の農協は岩見沢市農協と合併し、『三笠の特産品を開発するたるために民間と組むことはできない』と言われJAの壁に突き当たった」と述懐する。
地元農家を一軒一軒回っているうちに渡辺農場に巡り合う。渡辺農場はJAとは違うグループを立ち上げ始めており、玉ねぎの空知黄の規格外品を使ってドレッシングやソース、ポン酢を作ることで合意。さらに120年続く地元の果樹園で栽培していたりんご「旭」を使う協力も得て、半年かけて昨年2月にドレッシングを完成させた。
「世界初の鶏醤と地元の農産品を使った調味料として良い商品ができたが、課題は如何に流通に乗せるかということ。首都圏のデパートやどさんこプラザで販売しているが、産業廃棄物をリサイクルして農商工連携から生まれた安全・安心の地域ブランド商品として訴えていく」(大西氏)と販路拡大に注力することを強調した。
最後に大西氏は農商工連携のメリットとして①企業のポテンシャルが炙り出される②行政と密着した連携ができる③取引先や金融機関から評価される④地域振興に役立つ――の4点を掲げ、会場に集まった約120人に農商工連携の活発な取り組みを促した。
フェアでは、生産者や商業者、包装資材メーカーがそれぞれの農商工連携に向けた案件を発表したほか、展示ブースでは71社・団体が商品や技術を紹介、マッチングの個別相談も行われた。
農商工連携や1次産業の6次産業化は、農林水産業が基幹産業の北海道では、最も可能性のある取り組み。ただ、実際の成功例は一握りで多くの取り組みは日の目を見ないで終わっている。「農業者のDNAは生産にあるので、如何に加工品製造や販売に目を向けてもらうか課題は大きい」(6次産業化プランナーの岩井宏文氏)のが実状だ。