TPP(環太平洋経済連携協定)を平成の開国と位置づける菅首相。しかし、関税フリーの参入障壁なしは農業だけでなくあらゆる産業に大打撃を与える。TPPは平成の売国だ、という声は日増しに強まっている。
食糧の安全保障の面から、自給率は最も大切な指標。日本の自給率は40%で米国や欧州と比べても圧倒的に見劣りがする。
農業のGDP(国内総生産)比率を見ると、米国は1・2%、欧州は平均すると1・8%で日本は1・5%。米国や欧州はこの小さな比率の農業をしっかりと守る政策をとっているのに比べて、日本は『1・5%のために98・5%を犠牲にするのか』という閣僚の発言が出るなど、農業への眼差しが欧米と比べて極めて貧しい。
JA北海道厚生連会長、JA共済連経営管理委員会副会長の奥野岩雄さん(ふらの農協会長)は、今年、米国の農業団体『ファームビューロー』を訪れた。ここで、スポークスマンのローズマリー・ワトキンズ女史と話し合った。ファームビューローは、600万人で組織され米国農業の方向性を決める団体。
奥野会長はワトキンズ女史に「ファームビューローは日本の農業者の天敵だ」と先制パンチを与える。この発言でワトキンズ女史は本音を出してこう言ったという。
〈我々にとって日本の食糧自給率が何%であろうと関知するところではない〉
〈農産物の供給責任を持つのは我々の範疇の話ではない〉
ワトキンズ女史の発言は至極当然なのだが、ファーマーズビューローとしては輸出をしても供給に対する責任は別物と公言しているわけで、それは日本の政府が判断することと述べているに等しい。
現在、日本の耕作放棄地の面積は40万ヘクタールと言われている。これは埼玉県や胆振綜合振興局管内とほぼ同じ面積に当たる。こうした耕作放棄地を残したままで、自由化を進めればますます耕作放棄地は広がっていく。
農地は一旦荒れてしまうと元に戻すには莫大な資金が必要になるという。食べ物を自国で生産するという当たり前のことがグローバル化という名のもとに隅に追いやられてしまうことは、まさに平成の売国という表現がピッタリと当てはまる。