農協系統の全国組織である全農や全共連、信連に2001年に導入された経営管理委員会制度が曲がり角に来ている。この制度は、組合員代表からなる経営委員会が専門的知識を持つ実務家を理事に選任して、理事会は経営管理委員会が決定した基本方針に従って日常的業務を行う系統組織特有の制度。
経営管理委員会は、理事会よりも上位の機関で、日常的な業務執行には携わらないことになっている。
そもそもこの経営管理委員会制度は、農協系統金融機関である信連などが、住宅金融専門会社(いわゆる住専)への融資によって多額の焦げ付きを発生させたことの教訓から生まれた。高度な専門知識が必要な金融業務は、信連のプロパー職員が実務面を担当し、組織代表はその指揮監督を行うことに徹しようというものだ。外部委員会的な役割を果たすチェック機
関として位置づけられている。
住専問題で、国民負担が発生した1996年ころは各地域の信連に導入された経営管理委員会制度もいわばファイアーウォール的な役割を果たして組織運営上も有効と見られていたが、全国組織の系統機関に導入されてから10年、様々な弊害が目立つようになって来た。
道厚生連の奥野岩雄会長はこう言う。
「経営管理委員会制度が良いのかどうか、難しいシステムだ。私は協同組合組織では無理な制度ではないかと思う」
奥野会長が具体的に指摘したのは、JA北海道信連の増資問題だ。JA北海道信連は、リーマンショックによる有価証券の下落で前3月期には406億円もの最終損失を計上し、道内の各単協に増資を要請した経緯がある。
「経営管理委員会は経営には携わっていない。実際に経営しているのは専門的な知識がある学識経験者で構成される理事会。しかし、増資に際して単協に出資を何百億円とお願いするのは、結局は経営管理委員会の委員である組織代表。そこでの責任はどうなるのかが不透明。そんな理由から経営管理委員会制度は系統組織の運営には馴染まないのではないか」と指摘する。
また、奥野会長が副会長を務める全共連の経営管理委員会では、融資額によって経営管理委員会と理事会のどちらが決済するが決まっており、一つの機関で決済機関が二つあることになるという。
農政の課題に、果たして経営管理委員会制度のシステムが機能しているのかどうか、検証が必要になっていることは確かだ。