HAC(北海道エアシステム)の将来事業性の評価を道から委託されていた「あずさ監査法人」が、5つの経営改善策すべてについて営業赤字の可能性を指摘したことで、HACに出資しているJALや北海道電力、北洋銀行、北海道銀行などは出資株式の減損処理を迫られることになった。上場企業やそれに準ずる企業では、有価証券の帳簿価格が50%以上下落した場合は減損処理が義務付けられており、出資各社は2012年3月期決算でHAC出資株式を時価計上する可能性が高い。(写真は、丘珠空港を出発するHAC機)
 
 昨年4月からスタートした新生HACには、道やJALのほか就航する空港が所在する市町や経済界などが出資している。新資本金は4億9000万円で、道(36・5%)、JAL(14・5%)、札幌市や函館市、釧路市など8市町(25・6%)、経済界(23・4%)の出資比率になっている。
 
 しかし、1年目となる12年3月期は経常赤字額が約5億円になることが確実。
 上場企業は、出資した株式の価値が著しく低下した場合、帳簿上の取得価格を決算時の時価に修正した損失を計上する「有価証券の減損処理」を行わなければならない。
 
 出資株式の価格が時価で50%以上下落すると強制適用されるが、30%以上~50%未満の下落ではそれぞれの企業があらかじめ定めている信用リスクの評価基準に照らして判断するか、事業の「回復可能性」を判断して減損処理を行うかどうかを見極めることになっている。
 
 今回、あずさ監査法人は5つの経営改善策について、いずれも営業赤字が生じるとの検証結果を明らかにした。つまり、HACが航空事業を続けても赤字は解消されず損失が膨らむことを指摘したことになり、第3セクターでありながら民間企業としては成立の可能性がないという訳。
 
 上場企業でHACに出資しているのは、北海道電力、北洋銀行、北海道銀行、北海道中央バス、北海道ガスなどでいずれも500万円未満。しかし、出資株式は少額でも減損処理の対象になることは避けられず、出資企業はHACの12年3月期決算とあずさ監査法人による事業性評価を勘案してそれぞれの3月期決算で減損処理を行うものと見られる。
 
 また、JALは現在非上場だが、再上場を控えているため、資産の厳格査定は不可欠。このため、JALもHAC出資株式の減損処理は避けられない模様だ。


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