札幌市内のタクシー運転手169人が、それぞれの勤務先に正当な賃金が支払われていないとして未払い賃金1億8700万円の請求を求める訴訟を札幌地裁に起こしたが、その背後には労働組合の複雑な事情も絡んでいる。訴訟を提起したのは、タクシー運転手などで構成されている自交総連(全国自動車交通労働組合総連合会)北海道地方連合会の札幌交通を中心としたグループ。三和交通を中心としたもうひとつの自交総連北海道地方本部は今回の訴訟に加わっていない。
訴えた169人の内訳は、札幌交通が167人、三和交通1人、国際交通1人。札幌交通は休憩を返上して勤務した時間や15分以上の客待ちの一部を労働時間に組み入れていないとして原告1人について最大250万円の未払いがあると主張し、三和、国際の各1人は歩合給が最低賃金を下回っているため、差額の80~140万円の支払い求めている。
タクシー運転手などで構成される全国組織の労働組合には自交総連があるが、各都府県では地方連合会が1本化されている、しかし、北海道は地方連合会が2つ存在している。同じ地方連合会の名称ながらひとつは、札幌交通の組合員を委員長とするグループ、もうひとつは三和交通の組合員を委員長にするグループ。札幌交通のグループは北海道労働組合総連合(道労連)系。
今回、訴訟を起こしたのは札幌交通を中心とする地方連合会に加入する運転手たち。
タクシー運転手の平均年収は、02年の規制緩和によってタクシー事業参入が自由化されたことに伴う台数の大幅増加で減少傾向が続いている。01年度の317万円から08年年度は213万円に下がったという。10年度後半からは自主的な台数減車によって実車率は若干下げ止まっているものの、東日本大震災による影響もあって思ったほどの減車効果は上がっていない。
訴訟によってタクシー運転手の厳しい状況が明らかになり労働条件の改善に繋がることも期待できるが、事業者側にとっては歩合給の根幹に繋がるだけに双方の主張は激突することは必至。裁判の行方によっては、2つの自交総連北海道地方連合会の勢力図にも影響を与えることにもなりそうだ。