稚内信用金庫・増田雅俊理事長インタビュー「地域に寄り添って80年。100年先の視点で今を考える」

金融

 ──ポスト80年、未来の信金像を聞かせてください。

 増田 私は、冗談半分に200歳の大台まで生きるぞとよく言っています。そこまで時間軸を伸ばして、物事を考えなくてはダメだと自分自身に言い聞かせているのです。100周年、120周年の時にどうなっているんだと考えながら、足元のことを考えなければならない。

 目下の大きな課題は、主たる営業地区の経済縮小、人口減少です。札幌は大きなまちなので、ある意味で今までの延長線上の対応でもなんとかなると思いますが、宗谷管内はそうはいきません。ある意味で自治体を維持できない段階に来ていますから、市町村長の気持ちは痛いほど分かります。
 しかし、何が解決の鍵になるのか、正直妙案はない状況です。ただ通信技術のレベルが上がり、インターネットが発達したことによって、地図上の距離感がなくなってきたのは、地方によってプラスです。東京にいてもこちらにいても、リアルタイムで同じ情報が入るようになっている。これは非常に良いことだと思います。距離上のハンディキャップは、だんだんと少なくなってきているので、そういうメリットをチャンスに変えていかなければならない。

 今年、80周年を迎えるにあたって、毎年出している経営方針の枕詞で「80年の金庫の歴史を回顧し、改めて地域に感謝して信条の実践に努める一年に」と謳いました。当金庫の経営理念を策定した井須さんの考え方を今でも基盤に置いていますから、とことんそれを形に変えていくということです。もちろん以前の形と今の形は変わっていくでしょう。漫然と以前と同じことをやっていたのでは、じり貧です。しかし、その底流に流れる理念は、一緒でなければいけない。

 そのことを金庫の職員全員に考えてもらいたい。特に若い世代は、この先責任を持つ期間が長いですから、彼らには、再三「将来を展望して今をどうしたらいいかを考えてくれ」と言っています。また目の前の取引先も変わっていきますから、きちんと当事者意識を持って考える必要がある。具体的にどうするかは、その時に決定権を持っている人たちのネットワークが大きなウエートを持ちます。小さなまちでは、私たちが取り組んでいる三位一体のような横の連携がないと、まちとしての力が出せないので、その時代、その時代で頑張らなければいけない。

 そういう意味で、今の30歳代の職員には、同年代の取引先の人たちとの付き合いを深くしなさいと言っています。彼らが50歳代、60歳代になった時に、少なくない方々が社長になっているでしょう。その時に本気で話ができる相手が何人いるかで、仕事の成否は決まってきます。彼らがその立場になってから名刺を出して「初めまして」では、実のある話はできません。

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