苫小牧信金元理事長の独裁経営が招いた組織文化を指弾した北海道財務局

金融

 苫小牧信用金庫(本店・苫小牧市)は、2025年5月9日、北海道財務局から業務改善命令を受けた。信用金庫法第89条第1項において準用する、銀行法第26条第1項に基づくもの。(画像は、苫小牧信金が発表したリリースの一部)

 同信金は、子会社を有しているが、信用金庫法で原則禁止されている不動産関連業務を営み、以前から同金庫と人事・業務面で関係性が深かったにもかかわらず、理事長、会長経験のある元理事の指示、関与によって、1990年代から事実関係を当局に隠ぺいしていた。その後の理事や監事は、この子会社による違法性に関わる検証を怠っていた。

 また、法令に反して事業目的がないにもかかわらず、土地の取得や賃貸を行い、取り引き獲得を目的にした不動産の媒介が、金庫全体で行われていた。さらに、その元理事が所有する金融資産を、時価よりも高い価格で同金庫に買い取らせて、損害を生じさせた。元理事の指示により、同信金は、事業用として利用計画がない中で、必要性や購入価格の妥当性を検討しないまま、時価よりも高く土地、建物の購入を行っていた。

 当局は、法令が遵守されていなかったことについて、「長年にわたり、実質的に支配してきた元理事による、風通しの悪い組織文化が醸成されてきた中で、他の経営陣が元理事による独裁的な経営に過度に依存したため、牽制機能を含めた理事会の機能発揮が不十分となるなど、経営管理体制が欠如していたことが、根本原因であると認められる」と指摘している。

 これを受けて、同金庫は、代表理事および一部常勤役員が、2025年6月の総代会で退任するほか、第三者委員会を設置して、要因分析と再発防止の提言を受けることにした。さらに、外部人材を役員に招聘するなど、役員体制を刷新する。

 理事長、会長経験のある元理事は、アイデアマンとして知られ、特任の専務理事や常務理事のポストをつくり、民間から人材を登用するなどしてきた。道庁OBや拓銀OBも非常勤理事に迎えたこともある。同信金を、高収益信金にしたのも元理事の功績とされる。今回の業務改善命令について、金融関係者は、「おそらく何か一つの事案が財務局に報告されたことで、芋ずる式にこれまでの法令違反が発覚したのだろう。元理事は、功績を花道に、早い時期に金庫から完全引退していたら、こういうことにはならなかった。引き際を間違えたとしか言えない」と話している。元理事は、2024年6月に健康上の理由から85歳で同信金理事を辞任、その後、施設に入所したという。

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