大地みらい信用金庫・伊藤哲也理事長インタビュー「地域の発展こそ使命」「審査部を本業支援部に変えた狙い」

金融

 ーー2015年7月に開設した「札幌支店」(札幌市中央区)は、根釧圏と札幌圏の企業をつなぐ架け橋という役割があります。

 伊藤 当初想定していたのは、根室・釧路のお客さまと札幌の企業をつなぐことでした。ところが、最近は、札幌のお客さまが、道東の食材を扱っている企業などとのつながりを求めるようになってきました。いわば、双方向での橋渡し役として機能するようになっています。「札幌支店」には、地域みらい創造センターの札幌オフィスも置いており、官学との接点も多く、北海道大学産学連携本部や札幌医科大学とは、連携協定も締結しています。北大発ベンチャーの調和技研(札幌市北区)にも直接出資しており、地元企業の生産性向上に生かす取り組みも進めています。

 ーー根室という地域だからこそ、生き延びる知恵があるということですね。

 伊藤 どんな環境でも、知恵を出して生き延びていく気概が、根釧の企業にはあります。根室には、鮭の水揚げが減っても、付加価値を付けて東京の大手百貨店と取引している企業があります。そこには、どこにも負けない加工力があります。道内では、水産加工場が少なくなっていて、漁獲した水産物が、加工できなくなってしまった港町もあります。そういう港町から、根室の水産加工企業に水産物が、持ち込まれてきます。そこで加工したものは、東京に向けて販売されているのです。

 ーー札幌圏2店舗目の「山の手支店」(札幌市西区)も、開設から2年が経過しました。

 伊藤 お客さまからは、他の金融機関の支店とは違う価値を見いだしていただいています。最近、「山の手支店」のお客さまから、同じようなことを言われました。それは、「株や承継問題を、即座に詳しく回答してくれる金融機関は珍しい」というお褒めの言葉でした。「特徴のある金融機関ですね」とも言っていただいた。オーナー会社の信託や事業承継、株の買い取り資金などにも結び付いています。山の手の立地を生かして、資産家の運用相談も積極的に行いたいのですが、こちらはまだ道半ばです。両輪が、うまく回っていくようにしたいと考えています。

 ーー2025年3月期決算の見通しはいかがですか。

 伊藤 上期は、計画通り進みました。どの信用金庫も同じだと思いますが、預金の支払利息が増える一方で、貸出金利を引き上げることは容易ではありません。それ相応の価値を感じてもらわないと、金利を上げることは難しい。企業経営は今後、厳しい時期が来ると思っています。物価が高くなり、人手不足の問題もありますから、しっかりと支えさせていただきます。

 その一環といっても良いと思いますが、今年4月に、審査部を本業支援部に名称変更しました。お金を貸せるか、貸せないかのような審査部という名称はやめて、何ができるかというアプローチをするための本業支援部としたわけです。あくまでも融資は、困っている中の一つのツールに過ぎない。本業支援をやらないと、本当の意味で経営者の皆さまのお役には立てません。

 モノの値段が上がっても、可処分所得がそれほど増えているわけではないので、消費者の使えるお金は限られてきます。そうすると、安くても良いものを選ぶ、つまり質を選ぶ時代になってきます。当信用金庫の地域商社「株式会社イーストフロント北海道」は、取引先企業の商品開発のお手伝いもさせてもらっていますが、例えば、中身の分析などについて、食品加工研究センターにつなぐなど、お客さまの商品の価値を高めることに、今まで以上に注力したい。

 地方の企業が強くなれば、雇用も増えます。人口減少に歯止めをかける、とまではいかないにしても、働く場所がないと、人口流出が続くだけです。地方の企業が強くないと、地域が強くなれないという観点で、お手伝いをしていきます。

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