大地みらい信用金庫・伊藤哲也理事長インタビュー「地域の発展こそ使命」「審査部を本業支援部に変えた狙い」

金融

 ーー大地みらい信金を、どう舵取りしますか。

 伊藤 旧根室信用金庫は「健全経営」「進取の気性」が、設立以来の精神とも言えるもので、新しいことを積極的に取り入れてきました。受け継ぐものは、しっかり受け継いだ上で、遠藤前理事長が掲げていた「価値創造」の精神も引き継ぎます。私自身、個の能力で全てをオールマイティーにできるわけではないので、チームで対応していくと役職員に伝えています。そうすることで、本当にお客さまのお役に立てるのではないかと思っています。

 2024年から2026年までの経営3ヵ年計画と執行方針を策定しました。その中で、「深くつながる、長くつながる、新しくつながる」をキーワードにして、お客さまとのつながり、お客さま同士のつながり、商品のコラボも含めて縁をつなぐことを掲げました。また、シナプス経営も掲げました。信用金庫は、預金を預かって融資をするだけではなく、地域の発展につなげていくことが使命と考えて、3ヵ年計画を作りました。

 理事長方針は単年ですが、変革と挑戦で金融の枠を超えて、本当にお役に立つことをしようと訴えました。例えば、お金を借りたいというお客さまがいても、お金だけを融資してもしょうがない。本当の意味で、何に困っているのかーー後継者問題なのか、人手不足なのか、生産性向上なのかなど、そうしたところに力を発揮しようと。

 当金庫には、りそな銀行に出向して、相続や遺言の専門知識を学んできた職員もいます。学資保険やがん保険、住宅ローン、マイカーローンなど、ライフスタイルに沿った金融商品がありますが、相続と遺言も、それにつながるものです。でも、まだ一つ残っている分野があります。それが、家族信託です。現状、認知症への対応として家族信託を取り扱っている金融機関は、ほとんどありません。認知症などで、意思確認が難しいため、リスクが高いからです。当信用金庫は、ライフスタイルサポートの一環として、ぜひやろうと取り組んでいます。

 ーー融資以外のコンサルティングサービスが、金融機関には求められます。

 伊藤 企業経営者の方々の悩みは、事業承継、M&A、後継者問題です。地方は、これらの課題がより深刻ですから、重点を置いて取り組みます。どの金融機関でも、これらの課題に取り組んでいますが、多くは相談を受けてから、M&A会社などに任せてしまいます。私たちは自前で対応しており、可能な限り、今後も自前主義を貫きます。

 ーーそれだけの人材が蓄積されているということですね。ノウハウ、経験も積んできたと。

 伊藤 数年前から取り組んできましたが、廃業の可能性があった水産加工企業を、回転寿司の企業につないだことがあります。水産加工企業は、市場でのセリの権利を持っていたので、回転寿司企業は、自分で水産物を仕入れることができるようになりました。地元の企業同士がつながって、雇用も維持できます。その後についてもフォローできるので、心が通い合うM&A、事業承継が可能になります。

 ーー地方の企業こそ、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が必要になっています。

 伊藤 DXの人材も中途採用で数人います。多分、全道の信用金庫の中でも、デジタル分野の層は、厚い方ではないかと思っています。取引先のDX支援には力を入れており、こちらについても、自前で取引先のお悩みを聞きながらDX化のお手伝いをしています。

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