北洋銀行は14日、札幌市中央区の北洋大通センター4階セミナーホールで「第2回市民医療セミナー」を開催した。同行は北海道大学との包括連携協定に基づき2011年度から北大大学院医学研究科がん予防内科学講座と共催で市民医療セミナーを開催している。13年度も8回のセミナーが予定され、今回はその2回目でテーマは『がんの化学療法の進歩~進行がんはどこまで治せる』。がんの化学療法で世界的な実績を持つ北大病院腫瘍センター副センター長の小松嘉人診療教授(49)が市民約60人を前に、最新のデータを分かり易く解説した。(写真は、講演する小松嘉人教授)
 
 小松教授は、稚内市立病院や国立がんセンターを経て同講座に入局した「がんの化学療法で最も有名な1人」(同講座の浅香正博特任教授)。
がん治療には、手術、放射線療法、化学療法があるが、化学療法の目的は①根治②延命③症状の緩和の3つで、原発性なのか転移性なのかを見極めたうえで原発性がんに化学療法を施さなければ効かないことがある。小松教授は、「化学療法はがん細胞を死滅させ、増えるのを止めるほか手術で取りきれない目に見えないがんも死滅させ、根治に繋がる。がんが大きくならなければ効いている訳で、がんと共存することも可能」と強調。
 
 抗がん剤には、吐き気や下痢などの副作用があるが「正しい知識を持てば怖くない。治療の前に情報を得ることが大事だが、間違った情報は仕入れないこと。また臨床試験を勧められたら、4~5年先のがん治療に役立つと積極的に考えて判断した方が良い」と述べた。
 
 小松教授は、胃がんや大腸がん、食道がんでの最新治療例を写真やデータを使って紹介、「抗がん剤を併用した標準的療法(※現時点での最高レベルの治療のこと)で着実に効果が上がってきている。札幌、北海道のがん治療は世界と同じレベルで、中でも大腸がんで経口抗がん剤を利用した治療は世界で一番のデータを出している。北海道で生まれた、いわば道産子治療法が世界の標準的療法になっている」と語った。
 
 講演後には、参加した市民から「原発性と転移性のがんは医師が簡単に見分けられるのか」などの質問も出た。総合司会を務めた浅香特任教授は、「北海道はがん化学療法では世界と同じレベルにある」と力を込めていた。
 
 なお、市民医療セミナーの第3回は6月25日午後1時半から「高血圧はなぜ怖い」をテーマに札幌医科大学島本和明学長が講演する。参加申し込みは北洋銀行法人部(☎011・261・2579)へ。


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